さまざまな視点と技法で本を使い倒す

 戦略というほどではありませんが、読書の「生産性」をあげるための方法は、さまざまあります。

・読書生産性=読書から得るもの(リターン)÷かかった時間や手間(コスト)

 私はいわゆる速読はしないので、本を読むのにかかる時間が極端に短いわけではありません。でも、同じ本や記事を読んでも、結構、人とは違ったことに気がついたり、見つけたりします。そしてそれらが将来、別のこととつながって新しい発想を生んだりします。コスト削減ではなく、リターン増加で勝負しているわけです。

 その「発見」につながる読み方を、『戦略読書』の第3章に「5つの視点」としてまとめました。

(1)反常識:それまでの業界常識・固定観念が覆された部分を探す
(2)数字:とにかく数字に落ちるものを見逃さず発見する
(3)対比:過去や他業界の例と比較して差を見つけだし、それが大事かどうかを見極める
(4)一段深く:出典まで読む、検索結果を1000件辿る、関連書籍も見てみる
(5)抽象化:事例や情報をそのままでなく、一段だけ抽象化して記憶する

 いつも注目していて、絶対見逃さないようにしているのは、(1)反常識と(2)数字です。その業界ではこれこれが常識だったが、それが間違っていた。この企業ではこういう常識があったが、変えてみたらうまくいった。そんな「反常識」の事例こそがわれわれの心の殻を破ってくれます。

「数字」にもこだわります。というか、なぜみんながあんなにこだわらないのかが、わかりません。「大きい!」とか「速い!」とかで、ものごとは覆りませんが、「規模が10倍」、「配送リードタイムが5時間」(当日配送可能ということ)、「2ヵ月で体脂肪率が半分」なら、経営や人生の意思決定につながります。ヒトを説得する力があるからです。

 いろいろなことを見つけ出すために、いつも無意識に「比べて」います。過去の類似事例と、現在の他業界事例と。似ているところ、とても違うところ。もし、矛盾しているところなんて見つかったら、宝の山が眠っているかも、しれません。

(1)(2)(3)で何か見つけたら、すぐに調べます(*3)。ネットや雑誌で十分です。ただし、人より「一段深く」調べること。検索結果の上位だけ見ずに、マイナーな意見が出現するところまでどんどん見ます。Amazonも「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の関連図書をどんどん見ます。Wikipediaは、英語版の方が詳しければそっちを見たり、出典のところの論文を読んだりします。

「抽象化」は直前でも述べましたが、そうすることであとで知識同士がつながりやすくなります。新人類によるコミュニケーションが云々ではなく、「進化とは断絶である」と記憶しておくことで、あとで「進化」や「断絶」に行き当たったときに、おっと『幼年期の終り』でもそういうことがあったぞ、となるのです。

 これらは、その文章から何を読み取るかの「読解力」や「読み方」ではなく、これまでの情報との組み合わせでどう読めるかの「読め方」といえるでしょう。読め方革命で、本の価値は何倍にも上がります。

*3 図書館司書に頼めるならそれもよいが、まずは自分でトライ!