では、お金(キャッシュ)の動きはどのようなものだったのでしょうか。

 表を見ると、ワタミは2014年度に、介護事業によって59億円のお金を稼いだものの(営業CF)、投資活動で81億円のお金を使ったので(投資CF)、結局、正味21億円を失っていることがわかります(FCF)。

 これは何を意味するかというと、介護事業を行うことで、ワタミではお金が増えるどころか、むしろ大きく減っていた、ということです。しかし、その代わりにお金以外の資産(有形固定資産など)が増加していたため、決算書の上では黒字に見えていたのです。

 ワタミの介護事業では、2006年度より9年間、このような状況が続いていました。一方、宅食事業を見てみると、そちらではしっかりとお金を増やしていたことがわかります。つまり、介護事業は一見「稼ぎ頭」に見えるものの、むしろワタミにとっては「金食い虫」であり、有利子負債の増加原因も、その大半が介護事業によってもたらされたものだということです。

 そうであれば、財務的に窮地に陥ったワタミがなすべきことは、「お金を増やしてくれる宅食事業は継続し、お金を減らす介護事業は売却する」ということです。

 10月1日、ワタミが損保ジャパンに介護事業を210億円で売却するとの報道がありましたが、これももう1年遅かったら、財務的に弱体化したワタミは、取り返しのつかない事態に直面していた可能性が高いのです。

 このように、2015年度において、ワタミは「損害賠償請求訴訟の和解」と、「介護事業の売却」という2つの大きな契機を迎えましたが、決算書を見る限り、それらは目前の破綻を避けるためには、まさにギリギリのタイミングだったことがわかるのです。