社長育成への経営者の本気度をどう示すか?

 チーム経営の基盤をつくった後に、社長がすべき最後の仕事とは何でしょうか。

 それは、社長以下全員が持っている過去の成功体験を壊すことです。特に、過去の成功を導いた当事者が社内に残っている場合には、誰もがその人に従うようになり、がんじがらめで新たな挑戦ができなくなっているケースが多々あります。

 新たなものを生み出すときには、経営陣の連携だけでなく、新しい風を呼び込んでくれる人材が必要です。

 国鉄分割民営化の参謀役を務め、民営化後は東日本旅客鉄道(JR東日本)副社長として自動改札の本格導入やビューカード、駅ナカビジネスなどの新規事業を手がけた故・細谷英二氏は、定期的に朝食会を開き、ファッション業界や外食産業の経営者など、鉄道とは関係のない人たちと「いかに駅を魅力的な場所にし、発展させるか」という議論をしていたそうです。

 レール(鉄道事業)とノンレール(非鉄道事業)を切り離し、ノンレール人材は採用も別枠にし、面接も細谷さん自身が行ったといいます。その際、「面接にアロハシャツを着て来るような人を採りたい」「『レールとのシナジー』という言葉を出した人は採りたくない」と発言した逸話が残っています。過去の成功体験もそれに固執する人材も不要だというアピールだったのでしょう。日本レストランエンタプライズの社長に30歳の人を抜擢するなど、思い切った判断が成功につながったことは周知のとおりです。

 リーダーを育成し、チーム経営を行い、改革を成功させる、あるいは会社を成長させるのは、経営者が本気度を示すことが不可欠です。では、本気度はどうやって示せばいいのか。答えは、話すことではなく、行動することです。その過程では、誰かが辛い思いをするかもしれないし、一時は業績も低迷するかもしれません。

 それでも「この会社にはポテンシャルがある」と信じて自分にハッパをかけて行動する。やがて経営陣や社員の意識が変わり、株主にも本気度が伝わるでしょう。これができるかどうかは、社長の「本気」次第です。

(構成/ライター 大山弘子)