確かに、事態は深刻だ。MRJのライバル、ブラジルのエンブラエルに対する優位性がなくなりつつある。「エンブラとの性能格差は20%から5%程度へと縮まった」(重工幹部)。MRJは407機を受注済みだが、うち半分は仮予約で「エンブラと両てんびんをかけられており」(同)、キャンセルリスクが高まっている。その上、引き渡し時期の遅延で、違約金が発生するリスクすらある。

スコープクローズの打撃

 延期とは別次元の問題も発生している。MRJは米リージョナル航空(スカイウエスト、トランスステーツ)から300機の受注があるが、その計画に狂いが生じそうな雲行きなのだ。この2社は米大手のデルタ航空やユナイテッド航空の委託運航を行っている。大手エアラインとパイロット組合との労働協約の中に設けられた条項(スコープクローズ)により、大手エアラインのパイロットの職を奪うリージョナル航空は「70席を超える航空機を使用しない」などの取り決めがある。「90席クラスから参入するMRJの生産計画では引き渡しが間に合わないかもしれない」(金融関係者)のだ。

 まさしく、泣きっ面に蜂。MRJ事業の20年度の黒字化は遠のき、資金計画の見直しは必至だ。「ボーイング向け航空機ビジネスが好調なうちに、減損や三菱航空機の資本構成の変更なども視野に入れるべき」(重工幹部)との声が上がっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)