オレ、また聖母子描かせられてるんすけど

山田 ダ・ヴィンチもある意味、干されてたのかもしれないけど。
でも、そこもまたアーティストな芸風の強いところで、「バチカンに描いてないんだって?」と突っ込まれても、「あんなとこに雇われたら好きな作品が描けなくなるから」で論破できちゃう。無敵の困った人という意味では、いちばんのヘンタイはダ・ヴィンチといえるかもしれませんね。

こやま そうですかね。ミケランジェロより?

山田 ミケランジェロは、なんだかんだ言ってちゃんと納品してるし。

こやま 仕事はしてるわけですもんね。

山田 もうバカみたいに、ものすごく仕事しているわけですよ、ミケランジェロは。彫刻だって楽々彫っちゃう超人ですから。でも、ダ・ヴィンチ的なアーティスト目線で見ると、「あいつ筋肉好きで彫刻のほうが才能あるのに、首が曲がらなくなるまで天井画を描かせられてかわいそう」みたいな評価になっちゃう。工房経営で成功したラファエロも、「あのおじさん自由だなー」って感じでダ・ヴィンチのアーティスト性に憧れてたんじゃないでしょうか。

こやま 自分ができないことばかりですもんね。

ラファエロ『システィーナの聖母 (サン・シストの聖母)』1513-1514年頃 アルテ・マイスター絵画館、ドレスデン

山田 「オレ、また聖母子描かせられてるんすけど。たまにはダ・ヴィンチさんみたいに新しいことにチャレンジしてみたいっすよ」って思ってたかも。 

こやま フフフ、依頼来ちゃうから描かざるを得ないですもんね。