「ヘンタイ美術館」とは、美術評論家・山田五郎さんを館長、ズブの西洋美術シロウト・コピーライターこやま淳子さんを学芸員見習いに見立てた架空の美術館。
美術に興味はあるけれどどこから入っていいのかわからない、という方々に向けた、西洋美術の超入門・連載です。こちらの連載では、書籍『ヘンタイ美術館』から内容をピックアップしてお届けします。今回は、「筋肉フェチのワーカホリック!ミケランジェロ」です。
ミケランジェロは
筋肉フェチのワーカホリック!
山田 ミケランジェロはちょっと人間的に問題があったらしくって。
こやま 人付き合いが苦手だったんですね。たしかに偏屈さが肖像画からにじみ出てる。
山田 なのに、バチカンにものすごい作品を残せたんだから、アーティストとしての実力はズバ抜けてたってことですよ。
こやま 右下の絵って、すごく大きいんですよね。
山田 めちゃくちゃデカイですよ。
システィーナ礼拝堂の天井画は天地創造のさまざまなシーンを描いているわけですが、部分部分がそれぞれ一個の大作として成り立つくらいのスケール。このときの制作風景は、チャールトン・ヘストンがミケランジェロを演じた映画『華麗なる激情』でも見せ場になってましたけど、実際もほぼ独力で描きあげてるんだよね。上ばかり見て描き続けたので、首が曲がらなくなったとも言われてる。
こやま 何mくらいあるんですか?
山田 36m×13m。
こやま ひゃあ。何年くらいかけてやったんですか?
山田 4年間。4年かけてひとりで描いた。
ミケランジェロにも弟子はいたんだけど、あの人、信用しないんだよ、他人を。そういうタイプの人っているじゃん。部下を信用できないっていう。
こやま 下につきたくないタイプですね。
山田 同じ時期にバチカンで仕事をしていたラファエロが「ミケランジェロさんスゴイっすー」て感じで見学に来ても、「おまえ、オレの技術を盗みにきただろ」って言って追い返したり。とことん人を信用できないタイプなんですよ。そういう意味では、この人はかなりヘンタイ。
こやま 偏屈ってことですね。