デトロイトショーでのフォード会見の模様。毎年恒例で、会場に隣接するアリーナを利用した大規模なプレゼン。今年の特徴は「クルマがほとんど登場しなかった」こと Photo by Kenji Momota

自動車産業のメインビジネスが
大きくシフトし始めた

 正月早々から1月中旬にかけて、ラスベガス、シリコンバレー、そしてデトロイトとアメリカ各所を巡り、クルマやITの最新事情を取材した。さらに1月後半にかけて、各所において自動車、電機、通信インフラ業界関係者らとの意見交換を続いている。

 そうしたなか、強く感じることがある。

 それは、自動車産業の主要ビジネスが、『新車売り切り型』から『データサービス提供型』へと大きくシフトする時代変革が、ついに始まったということだ。

 最も分かりやすいケースは、フォードだ。

 ラスベガスでのCES2016(家電およびITの世界最大級見本市)では、マーク・フィールズCEOが、「オートモーティブからモビリティ」への変革を強調。翌週の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)では、ビル・フォード会長が「私の曽祖父が、大量生産という大きな時代変革を成し遂げた。そしていま、我々自動車産業界は、過去に経験したことがない、新たなる巨大な時代変革に直面している」と言い切った。

 フォードの会見を、現場でジックリと聞きながら、筆者は、「時代変革がすでに、本格的に始まった」と実感した。

 今回の時代変革には、自動運転車、EV、燃料電池車などの次世代車は当然含まれているが、それらはあくまでも「変革のなかのパーツのひとつ」に過ぎない。

CES2016・メイン展示会場での表示。UberやLyftの乗り場は、タクシーと別で、少し離れたところにある Photo by Kenji Momota

 最も大きな変革とは、メーカーが市場に対して商品提案する「プロダクトアウト」から、顧客一人ひとりの声を反映した商品をメーカーが提供する「マーケットイン」への転換だ。

 それにより、自動車メーカーや自動車ディーラーの大幅な組織再編が起こる。

 また、社会におけるクルマの存在意義が変化しており、公共交通機関の利用が増え、UberやLyftなどのライドシェアが急速に需要を拡大するなど、いわゆる「クルマの公共化」が進んでいる。