人事異動を遅らせる狙い

 にもかかわらず、21年3月期までの中期経営計画では、成果主義を強調した人事評価制度の導入を掲げている。だが、「特ダネより失点のなさで出世した」(前出の関係者)とやゆされる渡辺雅隆社長が成果主義を強調しても、現場の士気が上がるはずもない。

 給与の削減以上に、こうした風潮に嫌気が差した人材の流出が水面下で進んでいるという。

 確かに業績は厳しく、朝日の16年3月期中間期決算は、営業利益が前年同期比30・5%減の21億円となり、14年同期の62億円から激減している。そこで今期の赤字回避のために打ち出した策が、本来4月1日に行う定期人事異動を5月1日にずらすこと。なんと、社員の引っ越し費用を翌期に振り替えるのが狙いだという。

 もっとも、朝日の今中間期の資産は、利益剰余金が2988億円と潤沢で、保有株式や不動産も豊富だ。ところが、退職給付に係る債務は1434億円と巨額に上る。これまでの高待遇のツケが数字に表れているわけだ。そこで、この債務を給与に振り替えて現役世代の負担を減らすため、定年を65歳に引き上げる案も組合側に提示しているという。

 だが「地方支局では、60歳を超えていても夜勤や警察取材をすることになりそう」(前出の関係者)だといい、こういった激務を高齢でこなすにはあまりに厳しく、退職する人も少なくないだろう。人材流出で紙面の質を落とせば、新聞としての存在意義が問われることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)