トヨタの売上高に匹敵する「デジタル赤字45兆円」が日本人に突きつける“残酷な現実”とは?写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 周知の通り医薬品の国際収支は日本発の画期的新薬が枯渇する一方で、抗腫瘍剤やワクチン、最近では抗肥満薬の輸入増が止まらない流れから23年度におよそ3.5兆円の赤字を出した。24年度も詳細は出ていないが、為替の円安進行もあって赤字額は大きく膨らんだものと推測される。創薬立国なるスローガンが恥かしさのあまり裸足で逃げていきそうな姿である。もっとも、デジタル分野に比べればまだ可愛い部分があるといえるかもしれない。

 25年4月、経済産業省の若手チームが「デジタル経済レポート」なる報告書をまとめた。それによると、24年の日本のデジタル関連収支は6.85兆円の赤字であったという。アニメコンテンツの輸出努力も虚しく、米アルファベットや米メタなどに支払う経営・コンサルティングサービス、米ネットフリックスやスウェーデンのスポティファイといったコンピュータサービス、iOSやAndroidといった著作権等使用料が軒並み嵩んだのが響いた。

 しかも残念なことに、日本全体がこうした外資系デジタルサービスに非可逆的に依存してしまっているため、今後、彼らへの依存度が最も悲観的なシナリオで進んだ場合、35年にはデジタル赤字の額は45兆円にまで膨らむと試算した。これはトヨタ自動車の連結売上高に肉薄する水準である。国の貿易収支と企業の損益計算書は一概に比較できるものではないとしても、近い未来、クルマで儲けられなくなったニッポンは、国民が必要とするクスリさえ買えない時代がやって来るかもしれない。

「iモード」や「写メール」で世界の注目を集めたのもはるか昔。足元で進むAI革命のスピードにも順調に遅れるなか、同レポートはこれを「デジタル敗戦」と名付けた。そのうえで、取得可能なデータを起点に、企業や企業の提供するサービスの付加価値がソフトウェアによって規定される、言い換えればソフトウェアが売れなければハードウェアも売れない「聖域なきデジタル市場」がまもなく到来すると警鐘を鳴らした。