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2026年の経済見通しに無難な予測シナリオが並ぶ。しかし、投資家の多くは不穏さも感じているに違いない。そこには通常の指針・尺度が通用しない事情がある。言葉で26年はこうだと明快に語ることは簡単だ。しかし、投資ポジションというリスクを伴う行動での表現は異なる。無難な予測と不穏さを投資でどう描くか、その勝機を考える。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)
米国景気堅調予測が優勢も
雇用と消費者心理に見える陰り
2026年は投資家にとってどのような1年になるだろうか。足元では、米欧中日、新興国まで、世界が景気後退に陥るほど悪い経済データは見えない。予測機関は基本的に無難に底堅いシナリオを示している。
しかし、各国・地域で、盤石とはいえない状況に、不穏なリスクへの警戒を拭えずにいる。従来の指針尺度では判読しがたい事情を踏まえ、投資の勝機を考える。
26年の米景気は底堅いとする見方が優勢だ。しかし、雇用と消費者心理に陰りがある。かつてなら景気後退入りを示唆する兆しとされた陰り方である。
しかし、判断は悩ましい。その理由は3つある。
第1に、雇用には、AI企業のAI導入によるリストラ、移民労働者への監視強化、政府部門の一時閉鎖とリストラなど、景気サイクルの現象としては扱い難い材料が並んでいること。第2に、消費者心理も、悪化する一般消費者と旺盛な富裕層の二極化が指摘されていること。第3に、企業投資は極めて堅調なAIインフラに牽引されるが、過剰投資の警戒も出ていることである。
筆者は、米景気の底堅さを前提としつつも、26年を通じて、この判定困難な雇用の悪化が、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げを催促する相場をベース・シナリオとしている。
FOMC(米連邦公開市場委員会)は25年12月に26年中1回の利下げ見通しを示した。しかし、FRB議長が26年5月までにハト派に交代する公算であり、実態の判りにくい雇用の悪化ゆえに、「後手に回ったらどうする」とばかりに、利下げに傾きやすいと見る。
米国は、利下げ余地が大きい。加えて、建国250年記念式典と中間選挙を迎えるトランプ政権も必要なら早期に景気対策を講じるだろう。
ただ、景気はサポートされても、陰りと政策の間で、市場は振らされる展開をイメージする。さらに、リスクとして、トランプ政権による関税、FRB人事、政府リストラなどの裁判の行方、中間選挙での共和党の勝敗が、政権の政策運営力への警戒を招き、市場を動揺させるかもしれない。
ここまでは、米国の26年に潜む不穏な要因を取り上げた。次ページでは、日本、欧州、中国、そして新興国における不穏な要因を検証しつつ、26年の投資における勝機とリスクを分析する。







