(2)物価上昇
 円安に向かえば効果は少ないのですが、輸入物価の上昇によって物価安定目標(2%上昇)には、ある程度はプラスには向かいます。しかし、原油価格がこれだけ下落する中でどれだけの効果があるでしょうか。

(3)融資の拡大
 この部分は、無理があります。先ほど少し書きましたが、欧州は融資が慎重姿勢だったのに対して、日本の金融機関は、メガバンクも地銀等も貸出競争を行っているような状態です。今さら、効果はありませんが、無理をすればさらに貸出金利が下がり、金融機関の収益を圧迫する可能性は特に十分あります。とくに地方金融機関に対する影響は否めません。

(4)国債の購入
 国債市場はすでに需給がタイトになっています。国債の新発債は毎年約40兆円ですが、毎年80兆円購入しているからです。現在、日本銀行が発行額の約3割を保有しており、このままだとあと2~3年で国債市場は枯渇します。今回のマイナス金利で、金融機関はさらに国債を購入することとなり、さらに一層国債市場の枯渇は早まります。この動きは国債発行額の増大への動機を与え、財政再建に逆行することにつながります。

 筆者の経験でも、マイナス金利の預金は、一時的に6ヵ月物等の金融機関間の資金貸出し(ローン)に回します。金融機関がこのように行動することによって短期から長中期までの金利の体系が全体として下げることになります。この資金と国債への資金流入によって、すでに5年物国債までマイナス金利になっています。

黒田日銀総裁による「ショック療法」の意味

 筆者は経済政策と「医療」は似ていると考えています。その本当の効能も大事ですが、経済政策を国民が理解していないと、効き目も限られます。黒田東彦日銀総裁もけっして思いつきで行ったのではないでしょう。だとすると、その目的は何でしょうか。

 今回の「マイナス金利」導入は、上記のように日本においては景気回復や物価上昇への効果は薄いことが分かります。それならばなぜこのようなショッキングな「マイナス金利」導入を行ったのでしょうか。

 もともと、黒田総裁は、人や市場に押されて行動するのが嫌いな方でした。彼は財務官で為替介入も担当しており、介入の効き目があるのは不意を衝くこと(サプライズ)であることを十分に知っています。ですから今回も不意を突いたのでしょう。