マネーゲームに巻き込まれない
冷静な対応で身を守れ

 ただ、為替は二通貨間の交換レートである以上、わが国の事情だけで決められるものではない。米国経済は、今まで堅調な展開を示してきたこともあり、2011年11月以降、ドル高・円安傾向が続いてきた。

 しかし、足元で米国企業の業績が伸び悩みになっており、米国の産業界からドル高に対する懸念の声が上がり始めている。そうした事情を勘案すると、日銀が金利を低下させても、なかなか円安・ドル高の方向には動きにくくなっている。

 黒田総裁はこれからも強気の姿勢を崩さず、インフレ目標の達成に向けて様々な金融緩和策を打ち出していくものと見られる。その場合、中国経済の先行き懸念や原油価格の下落に歯止めが掛かり、わが国経済が少しずつ上昇傾向を辿れば、黒田総裁の目論見は成功したと言えるだろう。

 しかし、足元の世界経済の情勢を見ると、なかなか楽観的になれないのが実情だ。むしろ、今まで世界経済を牽引してきた米国に減速の兆候が見えるようだと、経済回復のシナリオ自体が怪しくなる。

 実体経済の回復が見通せない中で、中央銀行が潤沢な資金を供給すると、どうしても金融市場や不動産市場に投資資金が流れ込み、マネーゲームが展開される可能性が高い。

 具体的には、株価や不動産価格が急上昇しバブルが発生することも考えられる。あるいは、上昇しすぎた資産価格が急落するケースも考えられる。

 われわれは身を守る手段として、実体経済や金融政策を冷静に見る必要がある。金があり余っている状況だからといっても、株式や不動産などの価格急上昇には十分に注意が必要だ。

 黒田総裁の意図を十分に意識し、金余りのバブルに巻き込まれるようなことがないよう、気を引き締めてかかるべきだ。その場の勢いや雰囲気に飲み込まれることは避けなければならない。