財務・資金部門は、企業がビジネスを実施してゆく上で、血液のように必要欠くべからざる“資金”を管理する部門である。一般的には資金管理には、資金の調達と運用、そして金融資産および負債のリスク管理が含まれる。IFRSの採用は、これらの財務・資金部門が担うすべての業務に大きく関係するといえる。今回は、個々にその影響を見ていきたい。
<資金調達の観点>
財務数値の変動要因と
自社ビジネスの関係性を把握すべき
企業は、そのビジネスを実施するために、様々な手段で資金を調達している。資金の確保を確実かつ低利で行うために、資金の出し手である各種利害関係者および、それらの利害関係者に情報を提供する役割をもつ組織に対してコミュニケーションを行っている。
資本→株主、投資家
社債→社債権者、投資家
銀行借入→銀行
情報仲介組織→アナリスト等
このコミュニケーションには、財務報告が主要な情報の1つとして活用されている。IFRSは、その概念フレームワークの中で、IFRSの目的が「リスクキャピタルを提供する利害関係者(Capital Provider)が、その意思決定に資するような“将来キャッシュフロー情報(Cash Flow Prospect)を提供することである」と述べている。まさに上述したような利害関係者のための情報生成の基準がIFRSなのである。
したがって、IFRSによって策定される財務報告が、どのような考え方に基づき、いかなる情報を提供するものかを理解しておくことは、財務・資金部門にとっては非常に重要なポイントである。もちろん正式なコミュニケーションはIR部門が担当するが、それ以外にも財務・資金部門はこれらの利害関係者と様々なコミュニケーションを行う立場であり、また説明のシナリオ策定には財務資金部門が深く関与しているからである。
また、当然ではあるが、財務・資金部門はIFRSの適用により、資金調達条件の基礎資料となる財務報告の数値自体がどのように変化するかも事前に把握しておく必要がある。
IFRSでは、多くの資産と負債項目が“公正価値”で評価されることになる。この結果として自社の財務数値が大きく変化する可能性がある。当該変化により資金調達条件が不利になり、再交渉が必要となる事態もありえる。