1.消費税が上がる前に、主婦はトイレットペーパーを買いだめする。店頭から商品がなくなると、バイヤーから「早く納品してほしい」と連絡がくる。そのときに粗利益額が低い(値段が安い)スーパーマーケットはあと回しにする。
2.あと回しにしたら、バイヤーからクレームがくる。クレームがきたら、「粗利益額の多い順番に納品しています」と言う。
3.するとバイヤーは、「早く納品してほしい」という思いから、値上げ交渉に応じてくれる。つまり、儲けが出る相手には先に納品をして、儲からないところはあと回しにする。そして、クレームがきてから、値上げの交渉をするわけです。
取引先から、「とにかく、先に納品してください。値段のことはあとで考えましょう」と言われても、応じてはいけません。「価格は先に決めておく。納品はそれから」です。
先に仕事をして、あとから「この価格です」と提案しても、受け入れてはもらえません。
消費税増税以降、鶴見製紙の営業成績が回復しているのは、「おもいきって値上げに踏み切った」からです。
“特注品”で通常価格の3倍でも、なぜ売れる?
株式会社高砂(清掃用具/東京都)の吉田典靖社長も、「商品の値上げ」をして、粗利益額を増やしています。掃除機が一般的になって「ほうき」のニーズは減っており、かつては年間120万本売れていたシダぼうきは、現在、10万本程度まで落ち込んでいます。それでも高砂が伸びている要因のひとつは、「価格を上げたこと」です。
ほうきは、1本200円程度です。薄利多売では利益が上がりにくい。そこで吉田社長は、収益構造を改善するために「特注タイプ」に力を入れるようになります。
「小山さんから、『特注タイプの注文を受けて、高く売れ』と言われたんです。見積もりを出すときも、少しずつ値段を高くしていきました。はじめ、通常タイプの『倍』くらいで見積もりを出したら、すんなり通ったので、もっといけるかなと(笑)。今は、粗利率が大幅に改善しました」(吉田社長)
多くの社長は、「値上げをしないこと」が企業努力だと思っていますが、それは間違いです。会社の業績を上げるために、「値上げをすること」も立派な企業努力です。