前回は同調について触れ、それがユーフォリア、そしてやがてバブルにつながる可能性があると書いた。

 同調と並んで、多くの人がマーケットに翻弄されて傷を広げる心理バイアスで大事だと思われるのが、認知的不協和の理論(※1)である。

(※1)認知的一貫性の理論【人はすでに持っている認知とそれに関する別の認知が調和・適合しない場合、緊張や不快が生じるが、それらを解消し認知的な一貫性を保とうとする。それらの起こる条件や解消方法についての理論の総称】のひとつ。認知と認知の相互作用には、協和的関係がある場合と無い場合があり、不協和関係の起こる条件、不協和の度合い、回避方法などに関するL・フェスティンガーの理論が知られている。

認知的不協和とは何か

 認知的不協和というと、何のことか、ピンと来ない人も多いだろう。ごくごく簡単にいえば、「嫌なことは聞きたくない」という態度にいたる心理バイアスだ。つまり、自分に馴染まない事象を拒絶しようとする傾向のことである。

 次の問題を考えていただこう。

【問1】あなたは迷った末に、あるメーカーの車を購入しました。その後、買わなかった車の広告をあちこちで頻繁に目にするようになりました。その車が颯爽と走っている広告を見て、あなたは、どんな気持ちになると思いますか?

A=あまり、いい気分ではない

B=自分の決定とは何の関係もない……と思う

 Aと答えた人は素直な人だろう。特に、迷った挙句の判断であれば、自分が選択しなかったほうの広告をぜひとも見たいと思う人はいまい。そう、不協和の度合いが強いからだ。