参議院選挙投票日まで、残り1週間を切りました。昨年の衆議院選挙では、「政権交代」が大きな争点で、国民に対する目先の利益誘導政策として、「高速道路無料化」や「子ども手当」が掲げられました。
そして政権交代後、高速道路無料化と子ども手当については、何とか一部実施までこぎつけたものの、いまや“バラマキ”との批判に晒されています。また鳩山前首相によって“凍結”されたはずの「消費税率引き上げ」議論は、菅首相の就任とともに速やかに“解凍”作業に入っています。
国民が知った「タダより高く、
怖いものはない」という現実
第10回でも書いた通り、高速道路は建設コストの回収やメンテナンス費用も必要であり、無料化する財源は必ずどこかでツケが回ってくるものです。この点は、子ども手当の財源についても同様で、今回の消費税率引き上げの議論の中で、「バラマキには財源が必要だった」という当たり前のことを私たち国民は学習したと思うのです。
まさに「タダより高く、怖いものはない」ということに、国民は気付いたわけですが、そもそも「入ってくるお金(入金)」と「出て行くお金(出金)」の辻褄が合うか否かを検証することは、私が以前いた銀行の世界では当たり前のことでした。
銀行における融資の仕組みを単純化すると、「入金」よりも「出金」が多い場合、「その差額分(出金-入金)」の融資(借入)を受ければ、その時点で資金的な辻褄は合うことになります。
これを国のケースに例えると、「歳入(入金)」よりも「歳出(出金)」が多い場合、国債を発行(借入)することで、資金的な辻褄を合わせていることになります。
当然ながら、借入をした場合には必ず、返済をしなければなりません。仮に期日までに返済できない場合には、返済期日を延長するか、もしくは新たな借入をして、その資金で前の借入を返済する必要があります。
しかし、このような状態を長期間放置しておくと、結果的に不良債権化することになります。借入には返済という義務が伴う以上、あくまでも対処療法に過ぎないのです。そこで、歳入不足の本源的な問題解決策としては、次の2つの方法が考えられます。
1つ目の方法は、バラマキに代表される「歳出(出金)」を抑えることです。企業のケースに例えると、コスト削減のリストラに着手する、ということになります。
2つ目の方法は、「歳入(入金)」つまり「税収」を増やすことです。例えば、新成長戦略により経済成長の果実が得られれば、それに伴い「税収」は増加します。しかし、種すら蒔いていない「新成長戦略」の果実を得るには、まだまだ時間が必要です。