プロジェクトは、定義からして失敗する

 ITを会社の武器に変える方法について講演することも多いのですが、
「ITプロジェクトはなぜ、あんなにうまくいかないのか?」
「ケンブリッジは、どうやって成功させているのか?」
 という質問をほぼ必ず受けます。

 それに対して、わたしは身も蓋もない回答をします。
「そもそも、失敗する仕事を人はプロジェクトと呼ぶのです」と。

 通常、プロジェクトと呼ばれる仕事は、
  ・初めての試みである。
  ・期限、予算、ゴールが決まっている。
  ・混成チームで取り組む
 などの条件を満たしています。
 要は、ルーティーンワークではない仕事のことです。

 この定義を裏返しにすると、
  ・初めての試みだから、先が読めず、リスク満載
  ・期限や予算が決まっているから、いつもそれに追われる
  ・混成チームだから、コミュニケーションが難しい
 となります。
 そもそも、ルーティーンワークに比べて、はるかに難しいのです。

 でも、ITを作らなければ競争には勝てません。
 プロジェクトを成功させなければ、会社を変革できません。

 とても難しい。でもチャレンジしなければいけない仕事、それをプロジェクトと呼ぶのです。

 このことを、ITプロジェクトに関わるすべての人がまず、知っておく必要があるでしょう。

同じ会社なのに、協力できない悲劇

 ITプロジェクトへの期待値のズレは、さまざまな局面で軋轢を生んでいます。
 いちばんやっかいなのは、エンジニアとそれ以外の人が、お互いを尊敬できないこと。
 経営幹部や業務担当者はエンジニアのことを「グズで、仕事のできない奴ら」と思っています。一方のエンジニアは「プロジェクトの難しさを理解してくれずに、無理難題ばかりふっかけてくる人たち」と思っているのです。

 これは悲劇です。
 本来、ITは業務をよくするために使うもの。経営に利益をもたらすもの。
 なのに、業務担当者と経営幹部とIT部門が一丸となってITを育てられない。 こういう状態で、競争に打ち勝つのはなかなか難しくなっています。

歩み寄るために、今日からできること

 これまでこの連載で取り上げてきたように、ITをうまく構築し、競争の武器にしている会社は多くはありません。
 できている会社も、決して100点満点ではありません。

 ですが、「ITを武器にできないのは、エンジニアが悪い!」「IT部門が悪い!」「システムインテグレーターが悪い!」「経営者が悪い!」と、新橋の焼き鳥屋で愚痴を言っていても、何も変わりません。

 一方で、特効薬がないことも、わかっています。
 うまくやれている会社を参考に、少しずつITに対する議論を積み上げ、実際の行動を変えていくしかありません。

 そのためには、よい事例を知ることが有効です。

 わたしの著書『会社のITはエンジニアに任せるな!』では、多くの会社の
  ・プロジェクトを成功させている事例
  ・経営、業務、エンジニアがうまくコミュニケーションしている事例
  ・プロジェクトリーダーを育成する取り組み事例
  ・対話の中から、長期ビジョンを見出した事例
  ・ITに経営者が主体的に関わっている事例
 などを紹介しています。

 少しでも、ITを会社の武器にする手助けになればと心より願っています。