ITプロジェクトはそもそも難しい。でも、その難しさに向き合わなければ、会社を変革できない。歩み寄るために、今日から何ができるだろうか?

ある成功プロジェクトでの悲劇

 あるプロジェクトが大きなトラブルも予算超過も納期遅延もないまま、無事稼動した時のこと。ITエンジニアが胸をなでおろしつつ、お互いの健闘をたたえ合っていたところへ、役員さんがやってきて、一言。

「君たちの仕事は、些細なミスが多すぎる。ミスを防止する改善策を来週までに報告しなさい」

 確かに、細かいミスはあったのです。なにしろ、ITプロジェクトでは、何万通りものテストが必要です。新しいシステムに切り替える直前には、何百という手順を正確にやり遂げる必要もあります。
 人間ですから、ミスはゼロではありません。

 でもだからこそ、エンジニアからすると、お客様に迷惑をかけるような大きなトラブルだけは起こさないように、テストやシミュレーションを繰り返してきました。
 過度に緊張した1ヵ月を過ごし、ようやくホッとしたところでしたから、役員さんの一言を聞いて、モチベーションは大いに下がったことは言うまでもありません。

「俺たちの手で、大成功させたというのに……」

 なぜ、こんなすれ違いが起こるのでしょうか?