熱海の旅館化した会社のIT
ある情報システム部長さんが、嘆いていました。
「うちの社長はトラブルがあるとキャンキャンいうくせに、それを防ぐための抜本的な投資は認めてくれない」
「うちのITはもう限界。メンテナンスをやり切れない。ビジネスを続けるためには、ITをゼロから作り直すしかないんだ」
「でも社長に、それだけ投資して元が取れるのかと言われると、言い返せない。別に新しいことをやるわけじゃないから、売上げは増えない」
なぜ、こうした擦れ違いが起きるのでしょうか?
それは、情報システム部門から「社長、ウチのITは熱海の旅館みたいになってしまっているんです」と言い出せないからです。
「熱海の旅館のようなIT」とは何でしょうか?
別に熱海に限らないのですが、古い日本旅館には本館、新館、新新館……と、どんどん増築に増築を重ねて迷路のようになっている建物が多くあります。
最初から青写真に沿って建て増しするのとは違い、思いつきのように足していった結果、やたら階段を上がったり下がったりするような、いびつな構造になっています。
会社のITも、最初に作ってから20年くらい経つと、増築を重ね、まるで熱海の旅館のようになっている場合があります。
『会社のITはエンジニアに任せるな!』にこの話を書いたら、何人もの読者から「ウチのITも、まさに熱海の旅館で……」とメールをいただきました。
建築と同じくITも、最初に作った時にはアーキテクチャー(建築様式、設計思想)にもとづいて作っていますから、整然としていたはずです。
ところが、長年使っていくなかでは「2ヵ月で○○の対応をしないとマズイ! とりあえずこの機能を追加して凌ごう」といったことがあるものです。
熱海の旅館化の始まりです。