エンジニア⇒ITリーダーというキャリアパスは無理がある

 ITを経営の武器にする際、プロジェクトリーダー(PL)の数がボトルネックになる。それはつまり、経営スピードはPLの数という、身も蓋もないことによって決まっている――これが前回の連載でお話ししたことです。

 経営スピードを左右する極めて重要なテーマなのに、なぜPL不足は一向に解消しないのでしょうか?
「ITエンジニアが昇格してPLになる」というキャリアパスが信じられていることが、原因のひとつです。

 わたしがこれまでに会った優れたPL、つまりIT活用の先頭に立っている人の優れたところを思い浮かべてみましょう。

【人から引き出す能力、教わる能力】
 ⇒ITプロジェクトは総力戦。ひとつのテクノロジーだけに詳しくても、突破できない。だから、その道のプロに教わりながら判断をする姿勢が必要。

【言語化能力、お絵かき能力】
 ⇒ITという目に見えないものを、いろんな立場の人々と作っていくためには、「こんなものを作ろう」を皆に示す力が必要。

【白黒つける】
 ⇒コンピューターという融通の効かない箱に、業務を教えこんでいくのがIT構築の仕事。すべてを明確にするために、意思決定を1000回くらいはする。
 しかも、関係者同士で意見は食い違う。それでも衝突を恐れず「ちゃんと喧嘩する場」を作るのもリーダーの仕事。

【胆力】
 ⇒やったことがないことをやるのがプロジェクト。予想外のことは常に起こるが、リスクを背負わなければ前に進めない。

 もう、この辺でいいでしょう。
 優れたPLの特徴はいくらでも挙げられますが、どれも「ITに詳しい」「優れたアルゴリズムが書ける」「プロジェクト管理の専門家」というよりは、リーダーシップの問題です。

 そして、「プログラミングが好きです、得意です」といって採用したITエンジニアが、必ずしもリーダーシップを備えているとは限りません。
 はっきり言えば、まったくリーダーっぽくない人の方が多いでしょう。

 つまり、「ITエンジニア⇒ITのプロジェクトリーダー」というキャリアパスは、そもそも適性を無視しているし、無理があります。