近隣県から都内に通勤するネットワーク・エンジニアのCさん(42歳)は、毎朝6時台の各駅停車に乗る。通勤快速なら8時台で間に合うのだが「いつ腹が痛くなって下すかと思うと、急行や通勤快速には乗れない」という──。
潰瘍や炎症など目に見える病因がないのに、差し込むようなおなかの痛みや張りと、下痢や便秘などの排便異常が続く病態を、過敏性腸症候群(以下IBS)という。腹部のイヤな症状が排便で軽くなるのが特徴で、男性は下痢型、女性は便秘型の傾向がある。
病気の原因は腸の運動機能異常と知覚過敏だ。食物は胃と小腸で消化吸収された後、大腸へと送られる。大腸では食べかすの圧力で自動的にぜん動が起こり、排泄しやすい硬さに水分調整しつつ、便として肛門へと運んでいく。ぜん動のスイッチを入れるのは、内圧に反応する腸内の神経系だ。
IBSでは、この腸内神経がほんの少しの刺激で敏感に反応し、腸管の運動機能異常と痛みを生じることが知られている。体質や遺伝の要素が強いが、一説では感染症による腸のひどい炎症がきっかけで、敏感肌ならぬ敏感“腹”になると考えられている。