税制改正法案が国会に提出され、消費税軽減税率問題が議論の俎上に上っている。
格差・貧困・少子化問題に悩むわが国において、1兆円もの社会保障財源を失う軽減税率の導入がいかに「経済愚策」であるか、その点を議論すべきなのだが、政治家のスキャンダルの追及などに貴重な時間をとられて、議論は必ずしも十分ではない。
民主党も対案を出すようだが、1兆円あれば低所得者対策として、若年層・ワーキングプアを支援できるような政策が十分可能である。具体的には、給付付き税額控除の一種で、低所得の勤労者に減税と給付を組み合わせて支給する制度で、多くの先進国が導入し効果を上げている勤労税額控除などを提言して、議論すべきではないか。
わが国に決定的に欠けている政策は、最低賃金でフルタイムで働いても、200万円程度の収入しか稼げない若者やシングルマザーへの支援である。なぜかわが国では、ここに焦点を当てた議論が行われていない。しかし大部分の先進諸国はここに焦点を当てた勤労税額控除なる政策ツールを持っている。
アベノミクスの行き詰まりが明らかになりつつある今日こそ、所得再分配、若年勤労者支援の政策を打ち出すべきだ。
さて、多くの論点がある軽減税率だが、「外食を除く食品」が軽減税率の対象となった点を取り上げてみたい。
正確に定義すると、飲食設備のある場所で顧客に飲食サービスを行う場合、「持ち帰りのための容器に入れ、または包装を施して行う飲食料品の譲渡」に当たれば「食品」になる。そこで、コンビニにイートイン・コーナーのある場合でも、持ち帰りのための容器に入れられて販売される場合は、通常の「食品」の提供(軽減税率)に当たり、トレイに載せられて座席まで運ばれる、返却の必要がある食器に盛られた食品は「外食」(標準税率)に当たることになる。
現実に「混乱覚悟」となるのは、ファストフード店などにおける、テイクアウトとイートインの区別であろう。この問題については、連載第71回において、英国、ドイツ、フランスの3ヵ国の消費税軽減税率の執行状況を取り上げたところである。