理由5.まじめで純朴な国民性、親日国であること
ミャンマー進出を決めた企業の人と話をしていると、この国の国民性にほろっときたとの話をされる方が多い。現地の人間の素朴さを、失われてしまった昔の日本の姿を見ているようだと表現する人もいる。
1999年から現地で医療器具を製造しているマニーの松谷貫司取締役会議長兼執行役会長(肩書は2013年8月取材当時)は言う。「進出候補先として11ヵ所くらいの候補地の中にミャンマーがあって、何回か現地へ行っているうちに、ミャンマーが好きになってきた(笑)。私もそうでしたが、社内でもすごく好きになる人が多くて。ミャンマーが好きというかミャンマー人が好きというか、そういう感覚になっちゃって。ここでやればうまくいきそうだなっていう感じになってきました」。
実際に進出して日々仕事をしてみると、当然他の色々な側面が見えてくるのだが、ミャンマーならではの素朴な人間味は昔から多くの日本人を魅了しており、進出の際の一つの要因になっている。
加えて、総じて親日国であることも大きい。法律があまり整備されていない中で、何をよりどころにするかとなると、結局人間付き合いが重要になってくる。その中で、少しでも日本に対して親しい気持ちを抱いてくれることは、その逆の場合よりも当然心強い。
理由6.外資の進出が相対的に遅れていること
現在のミャンマー進出への過熱感の一番の背景は、今まで西側諸国企業にとって数少ない未開拓のゾーンだったことだ。一人当たりGDPも低く、今後の経済成長の伸びしろが大きい割に、長年の経済制裁もあって、今まで西側諸国にとって進出の空白地帯だった。ASEAN主要国における日本商工会議所会員数を比較してみると、カンボジアに次ぐ少なさで、まだ進出社数も限られている(図表1-15)。域内で日本企業の集積が最も進んでいるバンコクの1618社はともかく、ベトナム、マレーシア、フィリピンにも大きく水をあけられている。
2011年にテイン・セイン大統領の政治経済開放政策が発表されると、世界地図で数少ない白紙の国を自社の色で染めようと、多くの企業が我先にミャンマーに殺到した。日本からも多くの企業が、他社に遅れてはなるものかとおっとり刀で視察に訪れた。
そこで多くの企業は、現地のインフラや法律の未整備状態に直面し、果たして本当にこの場所に進出できるのだろうかと戸惑う反面、もし自社がひるんでいるうちにこの未開の市場が他社に取られてしまったら、とのジレンマに悩むことになった。
もし今後、誰もが進出できるように事業環境が整備された際には、当然他社も進出しており、先行者利益を確保できなくなってしまう。従って、リスクはあるが、現在何らかの形でを築く必要があるのではとの思いが、昨今のミャンマーラッシュの一つの背景だ。