ネット嫌いの農家を説得
コミュニケーションがファンを作る

 谷川氏が、「オーナー制度」にたどり着いた陰には、自身の苦い体験がある。

「前職の企画PR会社で、自治体の地域活性化案件を担当していたんです。そこで経営に苦慮する農家さんをたくさん見てきました。自治体では振興策として農産物オーナー制度をよくやっていますが、メディアで紹介されると一時的には話題になるものの、それだけで終わってします。点の状態で終わる。線としてつながっていかないことに不満があり、なんとかしたいと思っていたました」

ブログをまめに更新したり、イベントを実施するなど、ファンとのコミュニケーションをいとわない生産者ほど、成功をしているという

 オーナー制度を根付かせようと、生産者を一軒一軒回った谷川さんだが、門前払いされる日々が続いた。

「企画書を持って農家を回ったのですが、新規の提案というだけでまったく相手にされませんでした。年配の方も多く、ネット販売の利便性を実感してもらいにくかったのも事実です」

 しかし、地道に営業を続け、昨年12月、ようやくサービス開始へとこぎ着ける。

 オーナーズが提供しようとしているのは生産物だけではない。この2月から東京・代官山の日本料理店では、オーナーズに登録をしているお客様が来店すると、特別なサービスを受けることができる。また、それぞれの生産者側も作業体験や収穫祭など、体験もできるように工夫をしている。物の売り買いだけでなく、コミュニケーションを通してファンを増やしていく戦略だ。実際、ブログをこまめに更新したり、イベントを実施している生産者ほど成功を収めているという。

 TPPへの対抗策として、まずは確実性の高い直販ルートを確保するのが「最大のリスク回避策」と言われている。ところが、国内の農家の98%は家族経営。これまで地域の市場や組合に依存してきたため、直販ルートを持つ農家は非常に少ないのが現状だ。新たな販売ルート開拓のため、こういったオーナー制度はきっと役立つものになるに違いない。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)