「欧米諸国の不動産バブルの後始末はまだ終わっていない」。
先日、ロンドン在住のエコノミストがこんなメールを送ってきた。その通りだろう。欧州諸国では、バブルの後始末に伴う“ツケ”を政府(国)が肩代わりし、肩代わりした多額の債務によって、国の信用状態が悪化している。それが、ギリシャやポルトガルを初めとするソブリン・リスクの顕在化だ。
一方、米国では、4月に政府の住宅減税の制度が終了すると、5月の新築住宅販売は、前年同月比マイナス32.7%と予想を上回る落ち込みとなった。それに伴い、住宅価格が再び、下落傾向をたどるとの見方も出ている。
また、労働市場の回復も遅れが目立っており、家計を取り巻く雇用・所得環境は、すぐに回復することは考え難い。米国のGDPの約7割を占める個人消費が短期的に、大きく盛り上がることは難しいだろう。
欧米諸国のバブル後遺症に加えて、もう1つ、世界経済に不透明要因が出ている。それは、今まで世界経済の下支え役を果たしてきた、中国経済の先行きに、懸念が出始めていることだ。
その背景には、中国政府の不動産バブル抑制に伴う金融引き締めのスタンスがある。中国国内の不動産価格には、少しずつ頭打ち傾向が見え始めているようだが、金融引き締めによる流動性の減少や、不動産価格の頭打ち傾向は、短期的に、景気のマイナス要因になる可能性が高い。
欧米のバブルの後始末に加えて、中国の不透明要因が重なることは、世界経済の先行きに、黄色信号をともすことになる。
現在の状況から考えると、世界経済が“二番底”に落ち込む可能性は低いものの、今年後半、これらの3つの要因が重なるようだと、世界的に景気の減速は避けられないと見るべきだ。