仮想通貨に対する法的規制導入の意味

 政府は3月4日、「ビットコイン」などの仮想通貨を規制するために、資金決済法などの改正案を閣議決定しました。国会提出法案の名称は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(平成28年3月4日提出)」です。本国会(第190回国会:6月1日まで)で決議される予定です。これは仮想通貨に対する初めての法的規制となります。2010年に施行された資金決済法の制定に参加した著者の経験も踏まえて、この法案について解説します。

 当初、新しい存在である仮想通貨についてはその定義を始め取り扱いが困難であり、また仮想通貨を重視するのであれば、新しい独立した法律を制定するかもしれないとの話も出ていました。

 しかし、実際には資金決済法を改正することとなり、改正案では仮想通貨は「決済手段」の一つには位置づけられたものの、実際に「マネー」いわゆる「貨幣(通貨)」としては認められませんでした。この部分、一部に“前のめり”な誤解があるように感じます。

 日本の当局は、これまで仮想通貨を単なる「モノ」としてきましたが、今回一歩進んで、改正案では、不特定の者間における物品売買時の支払や、法定通貨(円やドル等)との交換に利用でき、電子的に移転することが可能な「財産的価値」と新しく定義し、マネーとは一線を画しました。

 一般的な「貨幣」はいわゆる「おカネ」のことで、最近では日本銀行を始め「マネー」というようになってきました。さらに「通貨」とは「法的通用性がある貨幣」のことで、厳密には貨幣とは違います。通貨は、日本では円で、米国ではドルのことです(弊書『通貨経済学入門(第2版)』[日本経済新聞出版社]ご参照)。ちなみに、日本銀行においては硬貨を貨幣、お札を銀行券とも呼んでいます。

仮想通貨は「モノ」扱いのため消費税がかかる

 今回の改正法案で仮想通貨を一応「財産的価値」と定義しますが、貨幣や通貨ではないため、税法上はあくまで「モノ(資産)」のままで、引き続き「消費税」がかかります。これは、日本では貨幣と認めないという極めて明確な事実です。