「フィンテック(Fintech)」についての議論が喧(かまびす)しい。決済業務を銀行から奪取するとか、「ネオバンク(Neo Bank)」とまでいわれ、銀行経営を圧迫すると指摘する向きもある。フィンテックは銀行経営にどんな影響を及ぼすのだろうか。

フィンテックとは何か
そのサービスと技術の全貌

 フィンテック(Fintech)とは、Finance(金融)とTechnology(技術)を合わせた造語である。そもそもは、金融機関向けシステムを指す言葉だったが、近年、銀行以外の金融系ベンチャー企業が、システムを駆使して行う「新金融スキーム(New Financial Scheme)」を指すことが多くなってきている。

 フィンテックの有名なスキームには、米国のショッピングウエブサイト「eBay」の決済として発展した「PayPal(ペイパル)」、中国の最大のショッピングウエブサイト淘宝網(タオバオワン)の「Alipay(アリペイ:支付宝)」、ケニアの銀行口座を持たずに決済できる「M-ペサ(エムペサ:M-Pesa)」、そして「Bitcoin(ビットコイン)」などがある。これらのほとんどは、ネットの商品購買の決済、そして送金などの決済といったオンライン決済サービスである。従来の金融サービスと比べ、手続きが簡便で、手数料が安いという特徴があるが、リスクの面ではやや不安ということである。ケニアでは慎重な日本人はM-ペサは便利であっても使わない。

 フィンテックの将来を考えるにあたり、特徴を以下に挙げてみる。

(1)現在フィンテックといわれるサービスは15年以上前からある

 フィンテックという言葉自体は新しい印象があるが、昨年に始まったわけではなく、意外と前から営業している。PayPal は1998年、Alipayは2005年、M-ペサは2010年、ビットコインは2009年から営業を開始している。つまり、フィンテックは継続的なイノベーションの流れの一環と考えられるのである。

(2)「個人向け」サービスが主である

「ネオバンク」ということで、銀行業務全体に影響があるように考えられ、一部には恐怖感もあるようである。しかし、まず、その特徴はネット系であり、融資にしても個人(リテール)がその対象である。ビットコインにしても、PtoP(Peer to Peer:Peerは端末のイメージ)、すなわち、個人間のダイレクト取引が主である。