日本で得た利益を
韓国に投資し
巨大財閥を築いた

「韓国から日本にカネが流れている」。反日感情に火が付いた韓国では、こんな批判も噴出した。このカネの正体は、配当金である。

 前述したように、日本の企業群がホテルロッテ株式の99%以上を保有しているので、実際に、ホテルロッテの配当金のほぼ全てが日本に流れていることになる。

 しかし、実は、金額は極めて少額である。2014年度の配当金は約24億円(255億ウォン)だ。

 むしろ、歴史をさかのぼれば、カネは日本から韓国へ流れている。1948年、重光武雄現名誉会長(93歳)が日本でロッテを創業。チューインガムの製造・販売を始めた。

 転換点は73年。武雄氏は、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)の要望で「半島ホテル」を買収。その後、名をホテルロッテに変えた。実はこの買収の背景には、「日本で稼いだ利益を韓国に投資する」という“裏の目的”があったとされる。

 武雄氏はホテルロッテを韓国の中核企業に据えて、食品や流通、建設といったさまざまな事業を展開。日本で得た利益を発展途上の韓国へ投資することで、ロッテを韓国5位の巨大財閥へと育て上げたのである。

 こうした経緯で、小さな「日本ロッテ」が大きな「韓国ロッテ」を支配する体制が形成された。

 もっとも、“日本”は“韓国”を資本でこそ支配しているものの、“経営”では支配できていない。「日本では韓国の財務状況をほとんど把握していない。

 ロッテHDが低金利で資金調達して韓国サイドに融通し、使途不明になることもあった」(元ロッテ幹部)。支配どころか、十分な情報共有さえなされていないというのが実態だ。

 現在、経営権を争う重光宏之元副会長(62歳)と重光昭夫副会長(61歳)は共にガバナンス改革の必要性を認識している。宏之氏はロッテHDの、昭夫氏はホテルロッテと(ロッテHD傘下の)株式会社ロッテの株式上場の検討を既に公表している。

 今日のいびつな統治体制は、独特のビジネスモデルと武雄氏の絶対権力の上に成り立ってきた。しかし、この40年で環境はがらりと変わった。韓国は先進国の仲間入りを果たし、武雄氏は経営の最前線から退いた。

 兄弟のどちらがトップの座に就こうが、まずはガバナンス改革に着手することになろう。皮肉にも、新生ロッテの船出は「閉ざされた創業家経営の否定」から始まることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)