“日本一のマーケッター”神田昌典氏の新刊『稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式41』から、注目の「手放す覚悟の法則」をこっそり紹介しよう。

【貧す人】→『利益』を得るために、『責任』は忘れよう。
【稼ぐ人】→『責任』を果たすため、『利益』を手放そう。

神田昌典(Masanori Kanda)
経営コンサルタント・作家。株式会社ALMACREATIONS代表取締役。日本最大級の読書会「リード・フォー・アクション」主宰。上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。コンサルティング業界を革新した顧客獲得実践会を創設(現在「次世代ビジネス実践会」)。のべ2万人の経営者・起業家を指導する最大規模の経営者組織に発展。わかりやすい切り口、語りかける文体で、従来のビジネス書の読者層を拡大。「ビフォー神田昌典」「アフター神田昌典」と言われることも。『GQ JAPAN』(2007年11月号)では、「日本のトップマーケター」に選出。2012年、アマゾン年間ビジネス書売上ランキング第1位。著書に、『あなたの会社が90日で儲かる!』『非常識な成功法則【新装版】』『口コミ伝染病』『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』『全脳思考』『ストーリー思考』『成功者の告白』『2022――これから10年、活躍できる人の条件』『不変のマーケティング』『禁断のセールスコピーライティング』、監訳書に、『ザ・コピーライティング』『伝説のコピーライティング実践バイブル』『ザ・マーケティング【基本篇】』『ザ・マーケティング【実践篇】』などベスト&ロングセラー多数。

Don't Buy This Jacket」(このジャケットを買わないで)

 アメリカの衣料品メーカー「パタゴニア」は新聞広告で、自社の商品であるジャケットの写真とともに、こんなコピーを掲載した。

「自社の商品を、買わないでくれ」と訴える、この広告は大きな反響を呼んだ。

 いったいなぜ、パタゴニアはわざわざ自社の損失になるようなメッセージを打ち出すのか?

 その理由は、企業責任を果たす決意を表明するためだった。

 彼らは、環境を守るためにムダな消費を抑えるべきだと考えていた。まだ着られる服を、シーズンが変わったからといって買い替え、修繕すれば長持ちする服を、捨ててしまうことが許せなかった。

 それらは彼らの企業ミッションである「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」ことと相容れなかったわけだ。

 似たような広告メッセージは、日本にもある。「転職は慎重に。」という、転職サイト・エンジャパンの広告である。

 転職してもらうことこそ、彼らの利益になるのだが、その利益を手放してまで、「転職者の人生を守る」という社会正義を貫いた。

 この表現は、目を引くためのキャッチフレーズではない。

 言葉が、一貫した行動により、裏づけられている。

 エンジャパンの広告は、企業(=広告主)のよい面を書くだけではなく、正直に会社を描く「取材」というスタンスを取っている。

 パタゴニアも、エンジャパンも、利益を手放す決意で、責任を表明したことにより、社会的な知名度と高い評価を獲得した。