かけた恩は水に流し、
受けた恩は石に刻む

「かばん持ち」をする社長には、2代目、3代目が多いのですが、私は彼らに「創業者への感謝を忘れてはいけない」と言い続けています。

 小田島組の小田島社長が、「かばん持ち」をしたときのことです。
最終日の夜、私は小田島社長を連れてホテルのバーに行き、そこで、

「先代(父親)への感謝を伝えるために、おやじさんのビデオをつくったらどうか」

 と提案しました。
 小田島組が堅調に成長しているのは、父親の努力があったからです。
 小田島社長は、「制作費250万円、制作期間4ヵ月」をかけてビデオをつくり、7月の経営計画発表会で上映しました。

「私たちのサプライズに、おやじはとても喜んでくれました。でも……、その年の12月、おやじにガンが見つかったんです。『余命3ヵ月』と言われ、翌年の4月に亡くなった。小山さんに『ビデオをつくれ』と言われていなかったら、私は親孝行ができないままだったでしょう。まさか小山さんが、おやじの死を予言していたわけではないでしょうが、こんなことがあるのかと驚愕(きょうがく)しました」(小田島社長)

 人は、ひとりで成長するのではありません。
 必ず育ててくれる人がいます。
かけた恩は水に流し、受けた恩は石に刻む――その人に感謝の意を表すのは、人間として当然のことだと思います。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/