前回の「共感+『実はそういう方にこそ』で、アプローチやクロージングがうまくいく」は、さまざまな段階で応用可能です。「共感+質問」は、3つの段階を経ることで、本音が聞けて結論を言ってくれるのです。
新刊『3か月でトップセールスになる質問型営業最強フレーズ50』より、営業における誰も教えてくれなかったエッセンスのみを抽出し、最強フレーズを紹介していきます。今回は、フレーズ17です。
売れる営業は、「共感+質問」でお客様の話を深める
前回に引き続き、「共感+質問」に触れていきます。「共感+質問」には、第1段階「共感+なぜ?」、第2段階「共感+具体的には?」、第3段階「共感+ということは?」という展開もできます。実例を示しましょう。
お客様 「やはり、自分の創業のときのことですね」
営業マン 「そうなんですね。それはなぜですか?」(第1段階「共感+なぜ?」)
お客様 「やっぱり、あのときはこれから頑張ろうという希望と本当にやっていけるのだろうかという不安で揺れる日々だったからね」
営業マン 「なるほど。具体的には、どのようなことがあったのですか?」(第2段階「共感+具体的には?」)
お客様 「自分が独立したとき、何もなくてね。一つずつ必要な機械を揃えていったよ」
営業マン 「そういうことがあったのですね。ということは、そのような経験をされて、今はどのようなことをお考えですか?」(第3段階「共感+ということは?」)
お客様 「そうですね。いつも原点に返って、一生懸命やらなくてはね」
この段階について、さらに詳しく説明しましょう。
第1段階 共感「そうなんですね」(シングル)+質問「なぜですか?(そのように考えられるのですか?)」
この共感で、お客様は寄り添われた感じを覚え、喜んでくれます。その後、質問すると、その理由を話してくれるのです。
第2段階 共感「なるほど、そういうことですね」(ダブル)+質問「具体的にはどのようなことですか?」
この共感で個人的に褒められると、さらにオープンになります。その後、質問すると、具体的にそのことを教えてくれるのです。
第3段階 共感「そういうことがあったのですね」(トリプル)+質問「ということは?(ということを通して、どういうことをお考えですか?)」
この共感で自分のことを認めてくれた営業マンを大好きになり、どんどん本音が出るようになります。その後、質問すると、結論を言ってくれるのです。
一つの話題から、少なくとも3回掘り下げるのです。これを「トリプル共感」と呼んでいます。そのときに必ず、「共感+質問」をします。特に共感は重要です。3回も共感してもらえれば、お客様は本当にうれしくなって、さらにいろいろと話してくれるのです。
私自身が質問型営業の指導をしていて、いろいろな相談を受けます。それは、「お客様との会話がどうすれば続くかわからない」「どのような質問をすればいいかがわからない」「質問をしても続かない」などです。
売れる営業には、このような悩みがありません。彼らは、お客様との会話は一つの話題をきっかけにどんどんと展開させることができるからです。展開とは、「深めること」です。
決して「広げること」ではないのです。それにはコツがあり、パターンがあるのです。
コツは、「お客様の話を興味・関心を持って聞く」ということです。売れる営業は、お客様自身とお客様の欲求やニーズ、それらを実現するための課題に対し、常に興味・関心を持っているのです。それを自分事として聞くことができるので、素直に共感することができるのです。「このお客様にどんなことがあったのだろう?」と純粋な興味が湧いてきて自然と質問が出るのです。結果として、内容をどんどん具体的に聞いていくことになり、話が深まります。
話を深めるコツは、「まるで自分が体験するような気持ちで話を聞く」ということなのです。
次は、会話を深めるためのパターンですが、これは「共感+質問」です。
共感には、次のようなものがあります。
- (1)「なるほど」「そうなんですね」―お客様の返答を肯定的に受け入れた表現
- (2)「さすが○○さんですね」―お客様を褒める部分も入れた表現
- (3)「○○さん、(辛かったですね)よく頑張っておられますよね」―お客様を労う表現
- (4)「私も同じ経験がありますからよくわかりますよ」―お客様の体験に共感する表現
質問については、次のようなものがあります。
- (1)「それはどういうことですか?」―話をさらに具体的に聞く質問
- (2)「たとえば?」―話の具体例を聞く質問
- (3)「なぜ?」―話の動機や理由を聞く質問
- (4)「ということは? どういうことですか?」―話の結論やまとめを聞く質問
- (5)「ということは? どうすればいいとお思いですか?」―話から今後の方針を聞く質問
質問は、コミュニケーションを円滑にして、人間関係をつくるためのものではないのです。質問はお客様の感じていること、思っていること、考えていること、さらに相手の大事にしていることや価値観も含めて、お客様を知るためのものです。話を深めれば、その人の生き方、人間性、大事にしていること、価値観が見え、お客様を知ることができるのです。結果、人間関係ができて、コミュニケーションも円滑になるのです。
ですから、話を深めるための質問は、状況に応じて(1)〜(5)の順番が変わることもありますが、話を妨げないように、短くあるべきなのです。