お客様との最初の接点は、緊張します。最初の印象が大事なことがわかっているからです。電話や飛び込みでアポイントを取る場合や、そのあとの訪問で、ちょっとした言葉遣いが話を聞いてくれるかどうかの明暗を分けるのです。
新刊『3か月でトップセールスになる質問型営業最強フレーズ50』より、営業における誰も教えてくれなかったエッセンスのみを抽出し、最強フレーズを紹介していきます。
売れる営業は、営業行為の否定から始める
アプローチで難しいのは、入り口です。どのように第一声をかけるのか、です。
これを間違うと最初から拒否されます。話を聞こうとさえしてくれません。世の中では、「営業=売り込み」という観念がますます強くなっています。営業は売り込みではありません。営業は担当する専門分野の情報を提供したり、お客様の状況をお伺いし適切なアドバイスをしたりする仕事です。結果として、採用していただく(買ってもらう)のです。
ここをしっかり理解しないと、適切なアプローチができません。
私は営業コンサルティングの仕事をしています。その中で、同行指導をします。飛び込みや電話でアポイントを取る方法をアドバイスしますが、飛び込みの場合、多くの営業マンは次のようなやりとりになります。
お客様 「失礼ですが、ご用件をお伺いできますか?」
営業マン 「はい、私どものご案内をさせてもらおうと思いまして」
お客様 「そのようなことはお断りしていますが」
営業マン 「少しの時間で結構なのですが……」
お客様 「申し訳ございませんが、アポイントを取っておいでください」
営業マン 「そうですか……」
このような断りを受け、営業マンは落ち込むのです。これは何が間違っているのでしょうか。
「ご案内」という言葉に問題があります。ご案内という言葉には、自社の商品の説明という意味が含まれます。これによって、最初から売り込みだと思われてしまうのです。
相手は、見ず知らずの営業マンから商品の説明を受けるほど暇ではありません。受付も、営業マンにはこのような応対をするように言われているのです。
では、どうすればいいでしょうか。営業に行くのではなく、コミュニケーションをしに行くと考えましょう。相手の状況を聞かせてもらい、そのうえで、必要ならば自社の話をさせてもらおうという姿勢です。それは次のようなアプローチになります。
お客様 「失礼ですが、ご用件をお伺いできますか?」
営業マン 「はい、ご挨拶にお伺いしました」
お客様 「アポイントはお取りでしょうか?」
営業マン 「いいえ、近くまで来ましたので、ご挨拶をと思いまして……」
お客様 「少々お待ちください」
これで少なくとも、頭から断られることはなくなるのです。この場合はあくまでも「ご挨拶」です。このアプローチには営業というイメージはありません。相手の状況を聞かせてもらい、自社の話をして、互いのことを理解するコミュニケーションを行うだけなのです。
相手の状況もわからずに「ご案内」というのは、余りにも身勝手な感じなので、断られるのは当然のことです。それを「ご挨拶」と言うだけで印象が変わります。実際、話す内容も変わるのです。
電話でアポイントを取る場合でも同じです。資料を送った後でアポイントを取るとしましょう。
お客様 「失礼ですが、ご用件をお伺いできますか?」
営業マン 「はい、私どもが先日お送りしました資料の件ですが」
お客様 「そのようなことはお断りしています」
営業マン 「少しの時間で結構なのですが」
お客様 「申し訳ありません」
営業マン 「そうですか……」
それが次のように変わります。
お客様 「失礼ですが、ご用件をお伺いできますか?」
営業マン 「はい、ご挨拶のお電話です」
お客様 「お約束はお取りでしょうか」
営業マン 「いいえ、先日、当社から事前に資料を送らせていただきましたもので……」
お客様 「少々お待ちください」
営業マン自身が、営業の仕事を理解し、それを伝えるための言葉が「ご挨拶」であると理解しましょう。堂々とした態度と表現で臨むことにより、アプローチの雰囲気も変わってくるのです。もちろん、この言葉だけでアポイントが取れる、面会できるということではなく、確率が高くなるわけです。
そして、面会、電話のスタートで強く断られ、出鼻をくじかれることが少なくなるのです。断られた後、続けて他のところへアプローチするにしても、気持ちがめげません。「ご挨拶」という言葉には、そういう効果もあるのです。