設立10年で、世界最大級の電子商取引サイトに急成長したアリババ・グループ。2007年にB2B専業の子会社が香港市場に上場した際には、時価総額が2兆円を超えた。米グーグルに次ぐインターネット企業の上場と注目されたグループの総裁は、今、何を考えているのか。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

─2009年の秋、創業10周年を迎えて、発足時のメンバーは、揃って第一線を退いた。なぜ、そのような決断に至ったのか?

ジャック・マー
1964年、中国浙江省生まれ。大学の英語教師だった頃に、地元・杭州の企業から頼まれて出張した米国で見たインターネットの可能性に衝撃を受ける。99年、18人の仲間たちと中小企業のビジネスを支援するための電子商取引サイト(阿里巴巴集団)を立ち上げた。創業11年目の現在、海外240の国や地域で事業を展開する。最近、世界中で進む環境破壊や、人びとの心の健康に関する問題意識が高じて、太極拳を始めたという。
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 中国には、「五十にして天命を知る」という格言(『論語』)がある。

 これは、天(神様)から与えられた“自分の命の使い方”(使命)を知るという意味である。これからは、若い世代の経営者を育てるために時間を割くことにした。

 過去10年で、アリババ・グループは、社員が1万7000人を超える大企業に成長した。会社の急成長と同時に、私も多くの経験を積んできた。

 まだ45歳なので、少し早いかもしれないが、自分の体力や気力が充実しているうちに、次の時代を担う若者たちの育成に取り組みたいと考えるようになった。

─日本では、70歳以上の大企業経営者は珍しくない。また、80歳を過ぎて、代表権を手放さない経営者もいる。なぜ、あなたは、そう考えるようになったのか?

 それは、日本社会の活力を奪っているという意味で、日本の人たちにとって不幸なことだ。80歳になったら、仕事などでがんばるのではなく、“人生のCEO”として生活をエンジョイすることに注力したほうがよいのではないか。