米国大統領候補を決める予備選では、共和党のトランプ氏旋風を巻き起こし、民主党では社会主義者を自認するサンダース氏が健闘している。米国先端政策研究所上席研究員のグレン・S・フクシマ氏が今後の展開を予想する。(「週刊ダイヤモンド」編集委員 原英次郎)
今年は米国の大統領選挙が行われる。11月8日の投票日に向けて、2月から各党の大統領候補を選ぶ予備選挙が始まっているが、共和党では過激な発言を繰り返す、実業家で不動産王のドナルド・トランプが代議員の獲得数でトップを走り、民主党でも圧倒的優位が伝えられていたヒラリー・クリントンを向こうに回し、バーニー・サンダースが健闘している。
7月には両党の候補者が決まるが、こうした現象はなぜ起こっているのか、これから大統領選はどう動くのか、そして対日政策はどのような影響を受けるのかについて、米国政府で対日貿易交渉に携わり、その後、在日米国商工会議所会頭なども務めた米国先端政策研究所上席研究員のグレン・S・フクシマ氏に予想を聞いた。(敬称略)
トランプ現象の背後に
米国社会の不満の高まり
──共和党ではドナルド・トランプがトップを走り、民主党でもバーニー・サンダースが善戦しています。こうした現象はなぜ起こっているのでしょうか。
去年の秋から冬にかけて、政治学者もジャーナリストも、今の事態を予想した人は誰もいませんでした。トランプは話も面白く、メディアを利用するのも上手だけれども、共和党の大統領候補として残るとは、思われていませんでした。
過去数回の大統領選挙を振り返ると、共和党ではベテランを中心に早い段階で候補者が絞られていたのに対して、民主党ではばらばらと多くの候補者が立候補していました。今回はその反対です。民主党は有力な候補者がクリントンとサンダースに絞り込まれたのに対して、共和党は最初17人も候補者がいた。当初、人気があったのが、トランプやヒューレット・パッカードのCEOだったカーリー・フィオリーナです。その共通点はどちらも政治家ではないこと。つまり、既存の政治家やワシントンに対する強い不信と不満があったということです。
また、主流派が支持していたジェブ・ブッシュ、クリス・クリスティー、マルコ・ルビオのうち、ブッシュとクリスティーが、若くて有望だと思われていたルビオを、討論会で集中的に攻撃した。保守派のテッド・クルーズも、共和党の主流派をずっと攻撃していたので、党内では嫌われていました。そうした状況によって得をしたのが、トランプです。