会社ではなく
自分のジャンプ台を築くために働く

木暮太一 経済入門作家、経済ジャーナリスト、出版社経営者。1977年生まれ。NHK「ニッポンのジレンマ」、フジテレビ「とくダネ!」、「ネプリーグ」など出演。『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク社)、『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』など、著書36冊、累計115万部。

木暮 僕は入社2年目で重要な展示会を任されたとき、毎日早朝4時まで仕事して、タクシーで帰宅して数時間後の朝7〜8時には出社するみたいなことを続けていたんですよ。当時はわからなかったけど、今思うとあの時代が今の僕を作っていると思うんです。

岩瀬 残念なことに、自分たちが若い頃にやってよかった「足腰鍛えよう」みたいなことを口にすると炎上しかねない世の風潮がありますよね。
   でも、例えばシェフはどうでしょう。「オレたちずっとジャガイモ剥いてるよ」といっても、それには誰も反論しません。ピアニストが「毎日10時間練習しています」、アスリートが「死ぬほど練習しています」といっても、ワークライフバランスとか言われませんよね。

木暮 イメージによるところが大きいのでは。ブラック企業という言葉ができてしまってその定義に該当するものはみんな悪だ、みたいな。大切なのは、それを誰のためにやるのかということです。あくまで、自分のためですよね。

  会社のために働けというと搾取みたいなイメージになるけど、結局それは自分に返ってくるんです。自分が30代40代になったときに、どの高さからジャンプできるかという話だと思うんです。そのジャンプ台を築き上げるのは自分だってことですよね。

岩瀬 素敵なたとえですね。

  木暮さんの展示会の話と同じですが、僕もBCG時代に「あんなに働いてるヤツいない」と周囲に思われていたそうです。後から言われて知ったんですけどね(笑)。
  そういえば、会議室のテーブルの下に寝て、早朝に起きてタクシーで帰ってシャワー浴びて8時に出勤する、みたいなことを続けていました。

木暮 はい、わかります(笑)。

岩瀬 でも、僕にとってのBCG時代の思い出は、そこではないんですよ。BCGでいろいろなプロジェクトをやりとげた記憶であって、長く働いたとか職場環境がどうだということについては、すっかり忘れていました。

  昔は職場環境で足腰鍛えられましたが、今は会社が残業を制限しているので、強制的に帰らされるパターンも多いですよね。自分自身で体力をつけないと良いビジネスマンになれない時代なのかなと。

木暮 そういう意味で今の若手は大変だと思います。すべて自己責任でやらなければいけないのですから。一見ラクに思えるけれど、かえって厳しい環境に置かれているのかもしれないですね。