真っ赤っかの
修正赤字をもらったら喜べ

入社1年目の「単純作業」のこなし方/経済ジャーナリスト・木暮太一<後編>岩瀬大輔 ライフネット生命(株)代表取締役社長兼COO。1976年埼玉県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。1998年卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て米国に留学。2006年ハーバード経営大学院(HBS)を日本人4人目のベイカー・スカラー(成績上位5%表彰)として修了。帰国してライフネット生命保険設立に参 画。2013年6月より現職。

岩瀬 2つ目は「50点で構わないから早く出せ」です。言いかえると、うまく上司の力を使おう、自分一人で抱えても進まないのだから、ということです。仕事は一人でやるものではなくてみんなで良いものを作ればいいというのが僕の考え方ですが、木暮さんはこの点はどう思われますか?

木暮 僕もそう思いますね。

岩瀬 センター試験を他の人にしてもらったら不正行為ですが、お客さんに持って行く提案書を先輩や友人に助けてもらいながら良いものを持っていけたら、喜ばれますよね。結局仕事は総合力勝負だなと。上になればなるほどなおさら感じます。

  日頃の人間関係や、誰が何を得意とするか把握しているとか、自分の限界わかっているとか、さまざまな要素があってできることですので、簡単ではないかもしれませんが…。

木暮 50点に出すことについては、僕も同意しますが、上司も同じように考えてくれないときついかな。

岩瀬 「なんでこんなもの出してくるのか!」みたいな上司だとまずいということですか?

木暮 そうです。だから、50点で出すことについて「むしろ上司がわきまえないといけない仕事の原則」と思います。

岩瀬 なるほど、そうかもしれません。
「ちゃんとしたものを作ってきなさい」という上司に、時間をかけて一生懸命9割の精度で資料を作って持っていったら、「違うんだよ~!」とイチからやり直しを命じられると、さすがに「それなら先に言ってよ」と思いますよね(笑)。

木暮 大企業には、結構そういう上司がいると思いますよ。だからまずは上の人間が心得てくれないと。

岩瀬 20代の頃、当時の上司からこんなことを言われました。その上司の前職である某大手企業若手のエリートは「はなまる」をつけてあげると非常に喜ぶ。けれど、岩瀬は真っ赤っかにして返すと喜んで帰ると。

  僕は良いものを作って早くお客さまに持っていきたい一心だったので、サンキューアイアイサーと持って帰って、超特急で赤字を修正し上司に再提出していました。提案書がどんどん進化していく過程を楽しんでいたように思います。