木暮 恐らくもともと大企業で育った人たちは、100点の提案書を出したときに褒められて、90点を出そうものなら「チッ」と上司から舌打ちされる経験をしたんでしょうね。
岩瀬 だからこそ、上司が心得るべき、ということですね。
木暮 そうでないと、仕事の定義が「上司からはなまるをもらうこと」になってしまう。
岩瀬 たしかにそうですね。ひとつだけ補足をすると、50点とは「雑なもの」ということではなく、自分ができることは一通りやった上での、現時点での最善=50点という意味です。不明な点は事前に調べておくとか、仮説を自分なりに立てるとか、アウトラインや目次だけ書いていくとか、それらのデータセットを持っていく。「お前そんなテキトーなものを持ってくるな!」というレベルでは決してなくて。
木暮 とはいえ、体裁を整えてお客様に見せられる状態で持って来いという人もいます。要するに上司が自分で仕事したくないだけなんですよ(笑)。これはマインドがちょっと違うんでしょうね。
岩瀬 うーん、上司の仕事って「育てる」とか「引き出す」ことですよね。なのに、そのようなマインドでない人も多いってことですね。
木暮 特に大企業はそういう人が少なくないと思います。ただ単に年次が上なだけとか、40歳だからそろそろ課長に昇格しようね、みたいな。
ちなみに、サイバーの藤田さんは岩瀬さん側のマインドなんですよ。
当時、藤田さんとマンツーマンの打ち合わせを週1で行っていましたが、「俺との打ち合わせでは、絶対パワポを作ってくるな」と言われていました。
だからA4一枚の紙に箇条書きで出していました。「今こういう状況です。それについてはこれを見てください」と別の資料を引っ張り出す。こんな具合に、まとまっていない状態でOKなんですよ。
岩瀬 見た目の体裁を整えるために時間を使ってほしくないからですかね?
木暮 はい。そんな余裕があるなら別のデータを調べたりする時間に投じなさい、みたいなことです。
岩瀬 それは、素敵な上司ですね。
木暮 そのマインドでリクルートに転職したら、「なんでこんな資料出すの?」っていう人も中にはいて、びっくりされました(笑)。
岩瀬 社風の違いが垣間見えますね(笑)。自分が絶対だと思っていた仕事の定義やスタイルは、相手によってガラリと変わったりしますよね。極めて相対的なものなのでしょう。