もっと能力のある部下がいたら――。
常日頃からこう思っているミドルマネジャーは、少なくないでしょう。
部下を持つ上司の大きな悩みは、「期待通りでない部下」への不満です。
今のミドルはプレーヤー兼務の人が多くなっているので、プレーヤーとしての自分と部下とを比較しがちです。その結果、「部下の能力不足」が目についてしまいます。
しかし、考えてみると、「部下よりプレーヤーとして優秀だから自分がマネジャーになった」とも言えます。
部下が不甲斐なく見えるのは、当たり前です。嘆いても事態は変わらないので、それよりも部下を大きく育てることを考えてみましょう。
では、部下はどうしたら自分の期待に添えるほど大きく育ってくれるのでしょうか?
前回ご紹介したとおり、人が育っていく過程には、「4つのステップ」があります。それは、「学ぶフェーズ」「実践するフェーズ」「伝えるフェーズ」「超えるフェーズ」です。
そのうち、部下が特に大きく育つステップは、第4ステップの「超えるフェーズ」です。
人はいつも同じ速度で成長するのではなく、ある時期、踊り場にさしかかったように一見成長が止まって見えることがあります。
しかし一方で、人が見違えるほどの成長を遂げる時期もあります。“修羅場体験”という言葉もありますが、神戸大学の金井壽宏教授は、それを「一皮むけた経験」と呼んでいます。
この言葉は、ザリガニやヘビが脱皮して、それまでより一回り大きくなって行く様を想起させます。「もう過去の自分とは違う」ということをイメージできる、よい言葉だと思います。