しかし、アップサイド・リスクのある投資の代表格といえば、やはり株式投資だろう。
ある株を1株100円で100株購入したとしよう(投資額1万円)。1年後、その会社は堅調に業績を伸ばして、株価が200円にまで上がっているかもしれない(評価損益プラス1万円)という意味ではアップサイド・リスクがある。また、急速に業績が落ちて50円にまで下落しているかもしれない(評価損益マイナス5000円)という点では、ダウンサイド・リスクもある。
このように、ファイナンスでは、アップサイドもダウンサイドも含めた不確実性の大きさをリスクとして考え、それに対するリスクプレミアム(リスクに対する見返り)に基づいて金利を計算していくことになる。ごくごく簡単に言えば、「損する可能性」だけでなく「得する可能性」にも注目していくわけだ。当たり前といえば当たり前のことである。
僕たちはリスクと聞くと、どうしても「危険性」のことを考え、足がすくんでしまう。しかし、ファイナンスは「リスクこそが価値を高めるための唯一の道」なのだということを教えてくれている。
アップサイド・リスクは、何も株式投資のようなお金の投資だけに限った話ではない。僕たちの人生における選択にも、必ずアップサイド・リスクとダウンサイド・リスクがついて回る。
下がり続ける銘柄ほどリスクは低い
ここまでの議論をまとめてみよう。
1. 現在価値は割引率で決まる。
2. 割引率は金利である。
3. 金利はリスクへの見返り(リスクプレミアム)である。
4. リスクは不確実性である。
したがって、正しく価値を見抜くためには、リスク(不確実性)の量を見極めなければならない。
しかし、いったいどうやって?
これを次に見ていこう。
まずはおさらいがてら、こんな問題について考えてみてほしい。
下の図は3つの会社の株価の変動(過去1年間)を表している。これを元に判断するとき、最もリスクの高い株式はいったいどれか?