経営者の方と話をしていると、ときどきこんな暴論を吐く人がいる
「借金(負債)をすると利子を払わないといけないが、株(株主資本)なら利子がいらないし返さなくてもいい。やっぱり株式で資金調達したい」
これはとんでもない見当違いだ。株式による資金調達のほうが、負債よりもはるかに高いリターンを要求される(高コストな資金調達である)ことを、経営者は何よりも肝に銘じなければならない。
財布に入れば「カネはカネ」――加重平均資本コスト
まだ抽象的でわかりづらいと思うので、具体例で考えてみよう。
あなたは長年の憧れだったレストラン起業をすることになった。銀行から1億円の融資をとりつけ、株主から2億円を調達できたので、あなたの会社の銀行口座には計3億円のキャッシュが入っている。
銀行借入の金利、つまりCOD(負債コスト)は2%だった。また、株主からは8%の利回りを求められている。要するにCOE(株主資本コスト)が8%ということだ。
株主や債権者に報いるためには、あなたはどれだけの利益を上げなければならないだろうか? つまり、銀行口座にある3億円に対して、どれだけのリターンを出せばいいのだろうか?
たとえば、お店の内装のために1000万円を口座から引き出したとしよう。その1000万円には銀行の封紙(お札を束ねている紙)がついているだろうから、金利2%で運用すればいいということになるだろうか? それはあまりに能天気な話だ。
お金には色がない。株主から集めた資金も銀行から集めた資金も、お金には変わりない。したがって、調達資金に派生するコスト(生み出さねばならないリターン)は、調達元の要求利回りから平均をとる必要がある。しかも、それぞれの調達額が資金量全体に占める割合も加味しなければならない。実際に計算してみよう。