オプション取引において決定的に重要な役割を担っている「ブラック・ショールズ式」とは、いったいどんなものなのだろうか?難解な知識の代名詞とも言われるこの数式のエッセンスとは?ファイナンス理論の入門書『あれか、これか』のなかから紹介していこう。
あまりにも「ワガママ」な
サイコロゲームの楽しみ方
前回の連載で見たとおり、オプション取引においては、それが対象とする資産のリスクが高ければ高いほど、オプションそのものの価値は高くなる。
しかし、なぜリスクの大きさがオプションの価値を高めるのだろうか?
それに答える前に、まずオプションの価値がどんなふうに計算されるか、ごく簡単に解説しておくことにしよう。
サイコロを1回振って、出た目×1万円の金額がもらえるゲームがある。「1」が出たら1万円、「6」が出たら6万円だ。
賞金の期待値は3.5万円(=(1+2+3+4+5+6)÷6通り×1万円)なので、ゲームの主催者は参加料として1ゲームあたり3.5万円を設定している。ということは、「1~3」の目が出たら赤字で負け、「4~6」の目が出れば利益が出て勝ちということになる。
「このゲームに参加していたことにする権利」をオプション商品として販売することにしよう。
普通なら参加料は、サイコロを振る前に支払わなければならない。しかし、オプション取引というのは、いわばサイコロの目が出たあとに、それを見てゲームに参加するかどうかを決める仕組みである。「1~3」だったら3.5万円は支払わずゲームに参加しない。「4~6」だったら3.5万円を「後出しジャンケン」で支払い、100%確実に利益を手にする――そんなハチャメチャな権利がオプションなのである。