しかし、安倍政権は第3の矢・成長戦略については、まず「金融緩和」「公共事業」で景気を回復させて軌道に乗せてから、時間をかけて取り組む戦略を立てた。そして、経済財政諮問会議を復活させ、日本経済再生本部・産業競争力会議を始動させることで検討を本格化させたものの、検討された成長戦略は、歴代の内閣が取り組んだ成長戦略と変わりばえのしないものであり「日本企業の競争力強化策」なので、基本的に誰も反対しないものだった。その一方で「岩盤規制」を呼ばれた強固な既得権益に切り込むことはできなかったために、成長戦略は、乏しい内容でお茶を濁したと批判されてしまった(第52回)。

度重なる景気対策で
財政健全化の国際公約実現は遠のいた

 財政再建については、「2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の国内総生産(GDP)対比の赤字を10年度比で半減、20年度までに黒字化する」という財政健全化目標達成が「国際公約」となっている(第68回)。この実現の第一歩が、2014年から8%、2015年から10%に消費増税を行うことだった。

 安倍首相は消費増税に関して、2013年10月に、当初の予定通り消費税率を現行5%から、2014年4月に8%に引き上げると決断した。アベノミクス第一・第二の矢で経済状況が好転したためであった。財政再建に向けて、ようやく第一歩を踏み出したと言えたが、一方で首相は、増税によって明るさの見え始めた景気が腰折れするのを回避するために、様々な手を打った。

 例えば、2014年度予算編成では、各省庁が概算要求で軒並み前年度より大幅増の要求を行った。厚労省は、高齢化社会による社会保障費の増大を背景に、13年度当初予算に比べ3.8%増の30兆5620億円と、過去最大の予算要求を行った。一方、国土交通省は、一般会計総額13年度当初予算比16%増の5兆8591億円の概算要求を行った。自民党の厚生労働族や国土交通族が、党政調会の部会で予算獲得を後押しした。2014年度予算の一般会計の総額は、過去最大の95兆8823億円に達した。歳出で最も大きい社会保障費は4.8増の30.5兆円と、初めて30兆円を突破した(第73回)。

 一方、税制面に関しては、安倍政権は「法人税の実効税率引き下げ」を決定した。法人税を1%下げると5000億円の税収減になる。代わりの財源を確保できなければ、消費増税が無意味になり、15年度の財政健全化達成が困難になると財務省は強く抵抗したが、「景気の維持」「デフレ脱却」に拘る首相が押し切った(第68回・P3)。