燃費不正問題で世間の激しい非難を浴びていた三菱自動車に対し、日産自動車の資本参加が突然、決まった。リスク覚悟で三菱自を救済する日産側の狙いは何か。三菱自は本当に再生できるのか。いまの時点で透けて見える課題を整理した。(ジャーナリスト・井元康一郎)
燃費審査のための重要情報であるクルマの走行抵抗値を偽装していたことを明らかにし、非難の嵐に晒されていた三菱自動車。再び経営危機に陥る気配が濃厚となり、動向が注目されるなか、5月12日に日産自動車の出資を受けて傘下入りするという資本提携が発表された。
記者会見には三菱自の益子修会長兼CEO(最高経営責任者)と日産のカルロス・ゴーン社長兼CEOが壇上に上がった。
大規模なリコール情報隠蔽事件を起こしてダイムラー・クライスラー(当時。現ダイムラー)から放り出された翌2005年に三菱自の社長になってから、一貫して同社の最高経営責任者として切り盛りしてきた益子氏の表情は、いつになくさっぱりとしたものだった。
「軽自動車で協業するなどしているうちに、いつか資本提携するだろうという流れになっていた。燃費偽装問題によってその時期が早まった」
提携を規定路線のように語る三菱自の益子氏
上機嫌でリップサービスを繰り返した日産ゴーン氏
益子氏はこのように、三菱自の日産傘下入りは燃費偽装問題の危機を回避するために急転直下決まったのではなく、既定路線のようなものだったと強調した。
一方のゴーン氏は、いかにも上機嫌だった。記者会見ではいつも大げさな身振りを交え、人を上から見下ろすような表情で話すのをお馴染みのスタイルとしているが、この日はことさらハイテンションで、「日産と三菱自は同じ日本企業であり、協力し合える土壌がある。三菱自のブランドは維持されるし、日産が支援することで低下した三菱自の信用は回復される。三菱自は良くなることができる。われわれはウィンウィンの関係だ」と、リップサービスのオンパレードだった。