定期健診でたんぱく尿が出たNさん、47歳。要再検査だが、面倒でほったらかしたまま。気になってはいるのだが。

 健診でたんぱく尿を指摘されても、診察を受ける人は半数以下にとどまり、残りは「たいした異常ではない」と放っておくそうだ。尿たんぱく陽性の時点で「隠れ腎臓病」の可能性大なのだが、これといった自覚症状がないので、忙しさに取り紛れてしまうらしい。

 確かに「腎臓の病気」といわれても、いま一つピンとこない。原因や病態が複雑で、専門家でもひと口に説明するのは難しい。そこで2002年、単純明快なCKD(Chronic Kidney Disease)という世界基準の概念がつくられた。日本では慢性腎臓病と訳され、原因が何であれ、たんぱく尿が認められるか、腎機能が健康時の60%以下の状態が3カ月以上続く場合を指す。放置すると健康人の数倍のスピードで腎機能が悪化し、腎不全から透析へと至る。尿たんぱくが指摘された人が透析まで進む確率は10年で10~15%。糖尿病、高血圧、喫煙が重なると、危険性は何十倍にも跳ね上がる。