インタビューの第2回目はモノ作りにかける思いを中心に語ってもらう。世界最小の針の開発で注目された河野製作所だが、経営改革後に飛躍のバネになった製品は、心臓血管外科で使用される針糸の新製品だった。
河野社長:もともとうちは心臓血管外科の分野は、売上がゼロだったんです。従来、心臓血管外科で使用されていた糸は、ポリプロピレン製。ところが、この糸は劣化する。心臓血管を縫ったあとに、実際に再手術が必要になることもある。これに対して、ヨーロッパで開発されたポリフッ化ビニリデンという糸は、まったく劣化しない。あちこちのメーカーさんが糸を売り込みに来たんですけれども、マーケットシェアが確立された、成熟した市場なのでだれも(製品化を)やらない。
千葉県市川市にある本社工場内のクリーンルーム。空気の清浄度が管理されており、製品の組み立て・パッケージングを行っている。
これは治験が必要だったんですね。治験をやると、お金と時間がかかる。うちとしては売上ゼロの分野なうえに、医療機関も新しいものに対しては、拒絶反応がある。しかしうちとしては、この糸は性能もいいし、患者さんにとってもいいので、やってみようと。これをやったことによって、うちがパイオニアとして認知された。いまや売上の中で一番大きなシェアを占めるまでになっています。
うちはシェアゼロだったけれども、この製品は今の製品よりも性能が優れていて、患者さんにとってもプラスになるということで、開発に取り組んだことが、今の成長の大きなバネになっていると思います。