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エステーの鈴木喬会長は、1935年生まれで御年78歳。競争の激烈な日用雑貨品業界のなかにあって、「消臭ポット」、「消臭力(りき)」、「脱臭炭」、「米唐番」、「ドライペット」と、次々にヒットを飛ばして来た。エステーの知名度は高いが、売上は480億円、営業利益は22億円(13年3月期会社予想)と中堅企業の部類に入る。だが、製品1個当たりの価格が二百数十円だということを考えれば、恐るべき個数を売りまくっている。
この2月には、初めての著書『社長は少しバカがいい』(WAVE出版)を出したが、その中で、「暴走できるくらいの権力がなければ、社長はいい仕事をすることができない」と明言し、話題となっている。経営論全体は著書に譲るとして、ここではヒット商品を生み出す秘密を中心に、3回にわたってインタビューをお送りする。第1回目は、その発想法について聞く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎)
本なんか書いたら
すぐ死んじゃうと思い込んでいた
――初めて本を出されたということなんですけれども、そういう心境に至った背景を簡単におしえてください。
私はね、本なんか書いたら、「すぐ死んじゃう」、「会社が潰れちゃう」と思い込んでたんですよ。それで全然相手にしなかったんですが、去年の4月1日に社長から会長になった。
その前に、あの大ブレイクした「消臭力」のコマーシャルをつくった鹿毛(康司)君っていう宣伝部長が、去年『愛されるアイデアのつくり方』(WAVE出版)という本を書いた。そしたら「宣伝部長ごときに勝手放題やらしとく社長の顔が見たいよ」と、すごく言われたんです。で、彼からも、当時まだ社長でしたから、「社長が書くしかない」って、毎日毎日脅かされてたんです。「私は立つ瀬がないわ、みんなにいじめられて。しょうがないから書いてちょうだいよ」と。