「医療保険で儲かった」
というのは本当か?
ときどき、入院して医療保険の給付金を受けとった人が「払った医療費より医療保険でもらったお金のほうが多かった」などと喜んでいることがある。
しかし、これまでいくらの保険料を払ったのかは計算できても、今後どれくらい払うことになるのかというところまでは考えが至っていないのだろう。
医療保険は、入院日数が長くなければ「モトがとれる」ことはまずないということを、しっかり頭に入れておこう。
前回の図を確認して、医療保障もすでに持っている保障を調べて、本当に「医療保険に加入する必要があるかどうかを検討してほしい。医療保険の場合は、「健康保険の高額療養費制度」と「勤務先の健康保険組合の付加給付」がすでに持っている保障にあたる。(※書籍ではもっと詳しく説明しています)
次回は、おすすめされやすい民間の「個人年金保険」について、解説していく。
株式会社生活設計塾クルー 取締役。
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、レタスクラブ等でマネーコラムを連載、ほかにダイヤモンド・オンラインでの『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』のネット連載も好評。
主な著書に『30代で知っておきたいお金の習慣』『投資で失敗したくないと思ったら、まず読む本』『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂5版』(共にダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本』(共に講談社)他多数。
この本で伝えたいこと~
「老後不安」を解消するには?
現在、私は、ダイヤモンド社のビジネス情報サイトである『ダイヤモンド・オンライン』で、『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』というマネーコラムの連載をしています。
2014年にスタートして以来、当初の予想を超える反響をいただいており、“老後のお金”について40〜50代のビジネスマンの関心が高まっていることを受けて、連載をベースに新たに書き下ろしたのが本書です。
さて「老後不安」は、どのように解消、または軽減するといいでしょうか。本でも書いたある通り、お金を貯めることはもちろん大切ですが、併せて「将来、お金のことで困るとすれば、どんなことが起こったときか」を知っておくと不安を軽減することができると考えています。
私はセミナーなどで「お金の不安」は、「お化け屋敷」にたとえることができると話しています。お化け屋敷は、真っ暗な中「どこで」「どんなお化け」に驚かされるかわからないから怖いのですね。
でも、たとえば息子がお化け役のアルバイトをしていて「3つ曲がったところで自分がこんな変装して待っている」と聞かされていれば、まったく怖くないはず。お金の不安も同じです。
「これからの人生で起こるかもしれない出来事」をあらかじめ知り、それぞれの対処法を身に付けておけば、不安は軽減されるのではないでしょうか。
本書では、40〜50代のみなさんを取り巻く厳しいお金環境について「これでもか」というほど書いています。本来、私のFPとしてのポリシーは「必要以上に不安を煽らず、すぐに実行できるアドバイスをすること」なのですが、あえて厳しい現実をお伝えすることにしました。
なぜなら、お金を貯められない人が貯められるようになるのは「危機感」が必要だからです。FPを20年やってきて、貯蓄の多い、少ないは、収入の多寡ではなく「危機感を持っているかどうか」だと実感しています。
「このままではマズイ」と危機感を持ったところで、第3章以降では具体的な対処法を紹介しています。ぜひ、「手を動かして」実践してみてください。
40〜50代の会社員であるみなさんの「貯め期」は、60歳までです。60代も働くつもりでいたとしても50代と同じ収入を得るのはむずかしいからです。この本が、定年後に備えるマネープランにご夫婦で取り組むきっかけとなってくれることを心から願っています。