「下流老人」になる分かれ目はどこか? 消費税増税、社会保険の負担増、教育費の高騰などで貯金が少ない40代、50代。
今の日本人の平均寿命は83歳で、60歳定年から平均で23年もある。老後年収200万円で20年以上安心して暮らすためには、老後のお金の現状を知っておくべきである。
ダイヤモンド・オンラインでも人気の連載「40代から備えたい 老後のお金クライシス」を書いている深田晶恵さんが、『定年までにやるべき「お金」のこと』という本を上梓。この内容をベースに、お金に不安がある人たちに役立つコンテンツを紹介していく。
オトクな公的制度の多くは、
「申請主義」である
「40代から備えたい 老後のお金クライシス」で、以前、老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこか、というテーマで書いた。そこでも述べたが、私は下流に落ちてしまう人というのは、次の2つの力がない人だと考えている
(1) 制度を知る・利用する力が「ない」
(2) 少し先を想像する力が「ない」
貧乏な老後はもちろんだが、それ以上に“下流老人”にだけはなりたくないという人は多いだろう。
そこで今回は(1)の「制度を知る・利用する力」について、詳しく説明しておきたい。
まず、頭にたたき込んでおきたいのは、社会保障制度や福祉制度の多くは「申請主義」だということだ。どんなに良い制度があっても、そのことを知らず申請手続きを取らなければ、利用することはできない。
「国や自治体がいいようにしてくれるはずだ」などと思い込んでいると、痛い目に遭うことになる。
たとえば、公的な健康保険には、自己負担額が一定額を超えると超過分が戻ってくる「高額療養費制度(こうがく・りょうようひ・せいど)」があることをご存じだろうか。
一般的な所得なら、69歳までは月9万円前後が最終的な自己負担になる。
たとえば、ある月の医療費が100万円かかり、窓口で自己負担3割分として30万円を払ったとしても、差額分が支給されることで自己負担は9万円前後で済む。つまり、合計で90万円分を補助してくれるということだ。
この高額療養費制度は、大企業に勤めていて健康保険組合に加入している人の場合、原則、申請しなくても自動的に支給される。しかし、協会けんぽ(全国健康保険協会)や国民健康保険の加入者の場合、自分で手続きをしなければ高額療養費の支給は受けられない。