例えば現在、精密機器メーカーの営業部長であるSさんは、自身のバイオリズムから最も集中できる時間帯を午前中の、9時半から12時までと認識していました。

 Sさんはこれを「コアタイム」と呼んで、外からの電話、内線電話すら取ることもせず、すべて折り返しにするよう部下と共有しています。部下からの「ちょっといいですか」も、九時半までと午後に対応することをチームに徹底して、コアタイムを他の作業に邪魔されないようにブロックしているそうです。

 ちなみに、このコアタイムでやる仕事は、『7つの習慣』で有名な「時間管理マトリクス」(図3)で考えていました。

 これは「緊急度」と「重要度」の指標で考えるマトリクスで、コアタイムに配分するのは、緊急度が高いものより、できるだけ重要度が高いものを優先させるそうです。キーアカウントへの技術回答などの「緊急度が高くて重要度も高いこと」か、追加工事の概算見積作成などの「緊急度は高くないが重要度の高いこと」を意識的に振り分けるそうです。

 Sさん以外では、頭を使う時間と手を使う時間、つまりは何かを生み出さなければならない「思考系の仕事」と、書類作成やメール処理といった「作業系の仕事」といった色分けをしている人も少なくありません。

 そして、もう一つのポイントは、コアタイムにやる仕事の数を制限すること。あれもこれもとやっていると、必ず時間切れになってしまうので、あえてその日にやるべきことの中で最も重要なタスクを一つか二つに絞って一気にやる、ということです。仕事は、だいたい見積もった時間をオーバーしてしまうので、タスクの詰め込みはスケジュールを狂わす元凶です。

 Sさんの場合は、午前中のコアタイムに重要度が高く難易度の高いもの、言い換えればもっとも頭を使う仕事を一つに絞って集中投下します。逆に、生産性が落ちる13時から15時30分には、外発的に集中力が高められるように来客のアポイントを入れたり、顧客訪問や打ち合わせを集約させています。

 さらに15時30分から終業時間までは、再び集中力が復活して頭がキレてくるので、緊急度の高い仕事、例えば手際よく目の前のタスクを潰していくようなものや、判断業務、承認業務や部下のフォロー、午前中に折り返しにした電話への対応、メールのチェックなどもこの時間帯を中心に行うようにしています。

 ちなみに、Sさんのようにコアタイムを「午前中」などと習慣化していない人でも、時間管理がうまくいっている人は、その日におけるコアタイムを一日の始まりに設定することがコツのようでした。

 今日やるべき仕事を「時間管理マトリクス」で色分けし、その中で特に重要なことを行うコアタイムを朝一番でまず確保すること。手帳なら蛍光ペンで囲ったり、グーグルカレンダーなら赤色にするなどして、徹底的に他からブロックしている人も少なくありません。人によってはこのゾーンを「聖域(サンクチュアリ)」と呼び、仕事の成果を生み出す最重要時間帯だと強く主張する先輩もいました。

 流されるまま急ぎの仕事をしているだけでは生産性は上がりませんが、自分が最も集中できるゾーンに、数を減らした重要なタスクを効果的に配分して一気に行うことが、時間に制限のある40代にとっては大切なことなのです。

【ポイント】他からブロックできる「コアタイム」を確保し、数を減らして一気に行う

第6回に続く(6/6公開予定)