一流企業の肩書きを捨てても
学ぶものは今の方がずっと多い

 前述の3人の他に、こんな「二流の人生」を選んだ人もいた。Oさん(40代男性)は、日本有数の大企業で販売を行っていたが、数年前にその会社を辞めて、趣味だった“ブリキのおもちゃ”のネット通販を始めた。

「入社したときから、この会社は役職が上がれば上がるほど、大変な責務が待っていることを知っていました。それで、20代の頃から『趣味であるブリキのおもちゃでいつか生活できないか』と考えたんです。最初はちょっとずつ通販を始めて、40歳の頃にはある程度平均的な収入を確保できるようになりました。そこで、会社での出世は捨て、趣味で食べていこうと考えたんです」(Oさん)

 退社するのではなく、前述した人たちのように、その企業で昇進せず同じポジションに留まる方法も考えられる。しかしOさんは、「大企業ゆえに、昇進を拒む社員の面倒を見てくれる雰囲気はなかった」という。そのため、彼は一流の肩書きになり得る大企業を辞めた。

「収入はもちろん少なくなりましたし、将来の安定も確約されていません。でも、生活できるレベルの収入はありますし、すでに一定の顧客もつくれました。何より、今の方が自分でビジネスの方針を考えたり、流通経路をつくったりする楽しさがあります」(Oさん)

 会社を辞めるときは多くの人から「なんで辞めるの?」と不思議がられたが、彼は今もその決断を全く後悔していないという。「その企業にいるより、今の方が新たな人との出会いや経営ノウハウなど、ずっと多くのことを学べている」と胸を張る。

 生き方が一流かどうかを考えるとき、どうしても「本業」である仕事のキャリアを基準に判断しがちだ。しかし、人生には趣味や家庭、恋愛など、様々な幸せの要素がある。もし一流のキャリアを目指せば、そのぶん、他の要素に時間を費やすことは難しくなるだろう。

 逆に言えば、二流の生き方のメリットとは、本業以外の様々な要素を満喫することかもしれない。一流の生き方でもそれは可能かもしれないが、二流の生き方を実現した人は、明らかに本業以外の要素を楽しんでいることが多かった。

 なお、二流の生き方を目指す人の多くは、昇進や管理職になることを望まなかった。その背景には、「昇進に魅力を感じない」「管理職になることが幸せではない」という考えもあると言えよう。